起業の裾野拡大に3つの課題 教育、イントレプレナー育成、地方支援(2-2)

 

 □デロイトトーマツベンチャーサポート・瀬川友史新規事業創出チームリーダー

 ■起業の一大ムーブメントを

 --イントレプレナーの発掘に力を入れている

 「当社は『挑戦する人とともに未来をひらく』という考えの下、ベンチャーの支援を主力業務としている。その過程では、眠れる挑戦者がかなりの規模で大企業に存在することが分かってきた。そこでベンチャー支援の方法論を大企業に当てはめて事業を進めている」

 --イントレプレナーになるに当たっての条件は

 「製造業には大学院を修了した技術者を筆頭に、本来は熱い思いがあるにもかかわらず、いろいろな理由で挫折したり、くすぶっていたりする人が意外と多い。こうした状況から3つのポイントを重視して取り組んでいる。一つは熱量。もう一つがビジョンを的確に示し、それを伝えていく巻き込み力。最後は、やりきり力だと思っている」

 --具体的な支援策は

 「成果を出せないと単なるお祭りや教育プログラムにしかならない。このため当社としては、実際にプロトタイプを開発し顧客に持ち込んで検証。失敗すれば何度もチャレンジし、最終的にサービスを提供するところまで支援する。ある機械メーカーでは数百件の提案が寄せられて、その中から選ばれた数人のメンバーが取り組んでいる」

 --17年は品質不正問題が相次いで表面化、企業のものづくりに対する姿勢が問われた

 「日本の製造業はこれまで競争力があり過ぎた。だからこそ技術者も受け身でも生きてこられた。しかし、ものづくりを取り巻く現在の環境をみると、イントレプレナーとして立ち上がらなければならない状況にあると言っても過言ではない」

 --特に危機感を抱いている業界は

 「個人を対象にしたBtoC関連の製造業だ。『こういった商品を投入したい』といった理想を抱きながら就職したものの、家電メーカーを筆頭に国際競争力は大きく低下しているのが現状。『技術力はあるので、スピード感をもって競争力のある商品を開発できるはず』という技術者の信念は強い」

 --イントレプレナーを取り巻く環境は、今後どのように推移していくとみているのか

 「大企業は金銭面や人材が豊富だが、組織内には抵抗勢力が少なくないので、1、2年では成果が出にくい。ただ、繰り返してトライすると徐々に文化が根を張り、強い会社へと成長する。その結果、『あの会社でもできるんだ』と他社も刺激を受けて追随するようになり、一大ムーブメントとなるはずだ」

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【プロフィル】瀬川友史

 せがわ・ゆうし 東大院修了。2006年三菱総合研究所に入社。15年デロイトトーマツベンチャーサポート入社、17年10月から現職。インキュベーション事業部副事業部長を兼務。36歳。岩手県出身。

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 □東京証券取引所・小沼泰之取締役常務執行役員

 ■安定成長続ける企業を支援

 --2017年も新規上場会社の本店所在地は、東京に集中する傾向が鮮明だった

 「こうした流れをどこかで逆転させる努力を続けないと、地方の人口が減少するばかりだ。組織全体で議論しているわけではないが、地元に人が戻っていける基盤を強固にしていきたいというのが、個人的な見解だ」

 --上場を目指す企業を掘り起こすため、地方金融機関との連携に力を入れている

 「地銀の関係者は『優秀な学生は地元でしっかりと仕事をしてほしい』といった思いが強い。このため、受け皿となる魅力ある会社、伸び盛りの会社を各地で発掘することを目標に掲げている。協定を結ぶことによって、資本市場関連の多岐にわたる情報を交換したり、知見の共有化を図ったりしてお手伝いすることがわれわれの役割だ」

 --17年に提携が一気に顕在化したが

 「約10年前から上場推進業務に携わっているが、ここ数年で雰囲気が確実に変わってきた。具体的には、顧客の成長を資本市場から支えたいという動きが徐々に表面化し、『一緒にセミナーを開催しよう』といった声も地銀の中から上がるようになってきた。こうしたタイミングを踏まえ、地域活性化に日本取引所グループとして積極的に関わることにした」

 --連携の具体的な内容は

 「顧客の元を一緒に訪れたりしている。地銀と企業のルートは緊密で、チャンスが広がっている。東京証券取引所としても18年度からは入行5~10年の行員を受け入れて、上場推進関連の部署などで数カ月から1年間にわたって研修するプログラムを導入。資本市場について学び、地元に帰って顧客の育成に関わることができる戦力を育てていく。人的ネットワークも広がるはずだ」

 --地方企業の将来性は

 「提携先の地方経済圏はおしなべて元気で、伝統的な産業やものづくりに携わっている企業に期待している。東京のベンチャーキャピタル(VC)とスタンスは異なり、地元の特徴を生かしてじわじわと業容を拡大し、雇用を生んで安定成長を続けるような企業を下支えしたい」

 --地域循環型経済が各地で活性化すれば、日本経済にどういったインパクトを与えるのか

 「米国のように地域力が強くなって経済圏の多様化が進むことで、人口減少の歯止めにつながることを期待している」

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【プロフィル】小沼泰之

 こぬま・やすゆき 慶大経卒。米カリフォルニア大バークレー校経営学修士修了。1984年東京証券取引所入社。2011年執行役員。17年4月から現職。56歳。千葉県出身。