安全運転へ広がるHUD搭載車 車速や進行案内をフロントガラスに投影
運転者の視界前方に車速や進行案内などの情報が浮かんで見える「ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)」の搭載車種が、高級車から軽自動車まで広がっている。大手自動車メーカー各社は、運転中の視線移動を減らせるため安全運転につながると評価して導入した。車載部品メーカーの間ではHUDの高度化に向けた開発が活発化しており、情報表示機能を競い合う動きが熱を帯びそうだ。
スズキは2017年12月中旬に発売した新型「スペーシア」に、軽で初めて運転に必要な情報をフロントガラスにカラー表示するデンソー製HUDを搭載した。
HUDは運転席の計器盤の裏側に取り付け、内蔵した液晶画面の映像がフロントガラスに投影される。搭載場所の確保や高いコストが壁となり、高級車中心に導入が進められてきたが、部品点数の削減などによってスペースが限られる軽への適用が実現した。
表示内容は車速や瞬間燃費などの基本情報のほか、交差点案内や警告情報。走行中にカメラが進入禁止の道路標識を認識すると、「進入禁止マーク」が映し出される。運転者からは、フロントガラスの前方数メートル程度先に浮かんで見える。
既に高級車では、デンソーが運転に必要な情報をフロントガラスの横60センチ、縦15センチの範囲に表示するHUDを17年秋に開発。表示サイズは世界最大で、トヨタ自動車が高級車ブランド「レクサス」の新型セダン「LS」に採用した。
マツダも国内では、同年2月発売の新型スポーツ用多目的車(SUV)「CX-5」を皮切りに、フロントガラス投影方式の搭載車種を順次広げる方針だ。
部品各社は「拡張現実(AR)」を用いたHUDの開発も推進。車両前方の現実の風景に経路案内の矢印などを重ねて表示できるようにする技術で、自動車各社も熱視線を注ぐ。
HUDの導入をめぐっては独自動車メーカー大手が先行。日本勢も追いかけるように商機拡大につなげ始めた。デンソーは、透明な板に情報を表示する方式を含むHUDの世界出荷台数が17年の約400万台から拡大し、20年に約1000万台に達すると予測する。
高齢者による逆走など不注意が原因の交通事故が多発する中、「小型車などにも広げ交通事故低減につなげたい」(デンソー)と強調。スズキの鈴木俊宏社長も「手の届きやすい価格帯を維持しながら安全装備を充実させる」構えだ。