テレワークここまで進化 在宅勤務中はロボットが対応 「オフィスなし」も
出社せずに働くテレワークが“進化”している。不在中の会議は代わりにロボットが出席する企業や、オフィス自体をつくらない試みも始まった。コミュニケーション不足などの課題を補おうと、さまざまに工夫を凝らす。「通勤時間を省ける」「家族との時間を確保できる」など社員には好評で、政府が掲げる働き方改革の柱の一つでもあり、今後どう広がるか注目を集めている。
社内の雰囲気分かる
昨年9月、NTT東日本のオフィス。「打ち合わせ、明日入れてもいいですか」。社員が机に置かれた高さ20センチほどの小型ロボットに話し掛けると、在宅勤務中の社員の声で「大丈夫です」と返事が返ってきた。
同社は2016年4月に“分身”ロボット「OriHime」を導入。在宅で働く社員とのコミュニケーションの手段にしている。会議に代わりに出席したり、移動するときに同僚が持ち運んだりする。
自宅にいる社員はロボットの顔を動かして社内の様子を確認し、近くにいる人に話し掛けることができる。在宅勤務中の40代の男性社員は「社内の雰囲気が分かり、会社にいるのに近い感覚」と話した。
全員がテレワークという会社もある。ソフトウエア開発のソニックガーデン(東京)は、パソコンに付けたカメラで社員全員の様子を画面に映し出し、バーチャルなオフィスをつくった。このため、「職場で一緒にいるような一体感がある」と倉貫義人社長は言う。
通勤時間がゼロ
兵庫県西脇市の自宅で働く伊藤淳一さん(40)は「画面上で同僚と雑談もできるし、デメリットは感じない」。同社に転職する前は2時間半かけていた通勤時間がゼロになり、家族との時間が取れるようになった。子供の学校のPTA会長も務める。「つい働き過ぎてしまうのが難点。でも元の生活には戻れません」と満足そうだ。
働く時間や場所を自由に選べる仕組みを16年7月に導入したのは日用品大手ユニリーバ・ジャパン(東京)。通勤ラッシュを避けるといったことだけでなく、社員の夫婦別居を回避する手段にもなった。社員の高尾美江さん(29)は、この制度を利用し、夫の住む名古屋市で東京の仕事をこなすことができた。
「会議はパソコンなどで参加したので問題はなく、効率よく働く習慣がついた」と高尾さん。同社取締役の島田由香さんは「仕事に前向きになったという声が多い。発想を変え、社員に豊かな人生を送ってもらうのが狙い」と話す。
こうした企業の取り組みについて、岡崎哲二東大教授(経済史)は「工場などを除けば、テレワークはさらに拡大する可能性が高い。産業革命の前は製造業も問屋の管理の下、家で仕事をする場合が多く、以前の働き方に回帰する動き」とみる。
ただ、普及にはハードルもある。岡崎教授は「職場と同じように働くには通信システムなどの環境整備が不可欠で、その費用をどうするかが導入を進める企業の課題」と指摘した。
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