ソニーと東芝、赤字事業が「第二の創業」で復活劇 研ぎ澄まされる生き残り戦略
業績悪化で大手電機メーカー本体から切り離された事業が新会社として独立し、復活劇を演じている。リストラで従業員数や売上高は縮小したものの、培った技術や身の丈に合った経営で「第二の創業」を推進。黒字転換も果たし、新たな挑戦も始めている。
「ロボットの受注生産は満員御礼です」。長野県安曇野市の「VAIO(バイオ)」執行役員、花里隆志さん(48)は笑顔で語る。同社は2014年にソニーのパソコン事業が分離して独立。パソコンのブランド名を社名に冠した。花里さんはソニー時代の事業発足当時から携わる。
安曇野市はかつてソニーの犬型ロボット「AIBO(アイボ)」の生産拠点だった。独立後は当時のノウハウを生かし、トヨタ自動車などから注文を受け、小型ロボットの開発・製造に着手した。花里さんは「ソニー時代に比べると少人数のため、技術職も営業に回った。そうした中でお客さんのニーズが見えてきた」と話す。
主力のパソコンは法人向けに販売戦略を切り替えることで安定した収益につながった。ソニー時代、事業として900億円超に上った営業赤字が、直近は6億円近い黒字に転換した。
東芝から冷蔵庫など「白物家電」事業が離れ、現在は中国の家電メーカー「美的集団」傘下の東芝ライフスタイル(川崎市)も業績が好調だ。
不正会計問題で経営が悪化した東芝は16年に白物家電事業を美的集団に売却。東芝ライフスタイルに残った事業企画部長の内藤順司さん(51)は「不正会計問題で東芝全体に圧迫感があり、開発投資も積極的でなかった」と振り返る。現在は美的集団の後ろ盾もあり「肌感覚で3~4割投資が増えた」という。
近く巨大市場の中国で軽さと吸引力を兼ね備えたコードレス掃除機の販売を始める。内藤さんは「大変だが、新たなチャレンジにわくわくする」と手応えを感じている。
企業経営に詳しい早稲田大大学院の長内厚教授は、日本の総合電機メーカーが無計画に事業を広げてきた過去を批判。「大企業から離れた新会社は、一つ一つの投資が失敗すれば命取りになる。そのため、生き残りの戦略が研ぎ澄まされている」と分析している。
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