【JAPAN style】「お通しってなに?」 渋谷のんべい横丁がマナー本配布、外国人に好評
「他人と会話を楽しむ」「何も飲まずに長時間居座らない」-。体験重視の訪日外国人に、昔ながらの日本を楽しめると東京・渋谷の「渋谷のんべい横丁」が人気を呼んでいる。しかし歴史とともに培ってきた独自の文化やマナーを知らず、店主や常連客のひんしゅくを買うことも少なくない。こうしたトラブルを解消するため、通訳・翻訳会社テンナイン・コミュニケーション(東京都港区)が英語版のマナー集を製作し配布。パンフレット片手に隣の常連客と和気あいあいに酒を酌み交わす外国人が増えてきた。
この横丁はJR渋谷駅近くにありながら、昭和レトロの雰囲気が漂う。ここに店を構えて50年を超す居酒屋「会津」に昨年12月、東京に住む友人からの口コミで知ったという外国人2人がふらりと訪れた。ビールを頼むと、火曜日を任されている店主、御厨浩一郎さんがパンフレット「渋谷のんべい横丁 文化&マナー」を手渡した。
カナダからやってきたアラン・デムスキーさんは「横丁のルールを学べて良かった」といい、店主と乾杯したり、後から来たお客さんに話しかけたり「日本の古き良き飲みの文化を体験できた」と喜んだ。赤ちょうちんが似合う古風な居酒屋が集まる独特の雰囲気を撮影できたこともうれしかったという。
交流に一役買ったテンナインの英語教育事業部プロジェクトリーダー、松本匡史氏は「グローバル化を通じて日本経済の活性化を後押しする企業として、日本人と外国人が文化の垣根を越え円滑なコミュニケーションを交わせるようにCSRの一環として作成した」と説明した。
訪日外国人の消費が爆買いなどの「モノ」から、体験を重視する「コト」に移行、手頃な値段で日本料理とお酒を楽しめる居酒屋に足を運ぶ外国人が増えている。
そうした中、会員制交流サイト(SNS)やブログなどの口コミで、チェーン店など大型店舗では味わえない「気を使いながら他人とお酒を酌み交わす」日本文化にふれあえる飲み屋街に注目。その一つが個性豊かな居酒屋が軒を連ねるのんべい横丁で「ブログで調べて訪れる外国人が6年ぐらい前から増えてきた」と御厨さんは話す。
一方で、「お通しの意味が分からない」といった文化の違いから外国人との間でトラブルが発生することもあり、入店を拒否する居酒屋も出てきた。そこでテンナインはマナー集の製作を企画、複数の飲み屋街に声をかけ、昨秋にのんべい横丁内の約30店舗に1200枚を置いた。
マナー集の配布効果もあって「日本のスタイルに合わせる外国人は、常連客に受け入れられている」(御厨さん)ほど、横丁に外国人がなじんできた。松本氏は「東京だけでなく全国の観光地の役に立ちたい」と意気込む。英語版だけでなく中国語版や、外国人が日本語を覚えて観光するためのフレーズ集の作成も検討中という。(松岡健夫)
■「渋谷のんべい横丁」の主なマナー
▽日本でのカジュアルな飲み会でのマナー
・1杯目はビールが基本
・乾杯の音頭
・相手のグラスにお酒を注ぐ
▽他人と会話を楽しむ
▽お通し・席料はカットできない
▽何も飲まずに長時間店内に居座らない
▽お店の人やお客さん同士の「いっぱいどうぞ」は通な飲み方
関連記事