【高論卓説】自動車ビジネス、今年も激変 CESで主役、進化を目の当たり
自動車ビジネスを大きく変える技術革新は早まっており、今年も激変の年となりそうだ。年初に米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」は自動車が今年も主役の座にいた。
CESでは、クルマが人工知能(AI)を持ち、インターネットにつながったロボティクスに進化している。
Cの「つながる化」、Aの「自動運転」、Sの「シェアリングエコノミー」、Eの「電動化」の頭文字を並べたCASEの進化を目の当たりにした。
英自動運転技術会社Aptiv(アプティブ)は、米配車サービス会社のLyft(リフト)とCES開催の5日間、20カ所の目的地に向けて、400回以上の自動運転配車サービスを実施。その99%以上が完全自動で稼働したと発表している。
Aptivは耳慣れない会社だが、米ゼネラル・モーターズ(GM)から分離した伝統的な自動車部品メーカーのデルファイが源流にある。シンガポールの自動運転ソフト会社NuTonomy(ヌートノミー)を買収し、先細り懸念の強いパワートレイン事業をスピンオフ、Aptivに社名を一新し、モビリティー・サービス会社への転身を突き進む。この経営のスピード感には驚かされる。
米フォード・モーターのジム・ハケット最高経営責任者(CEO)の基調講演も圧巻だった。AIでさまざまな機器がIoT(モノのインターネット)化されたスマートシティーの構想を掲げ、人を中心に都市設計と車両の在り方を見直そうと提案。
ディスラプティブ(破壊的)と感じる壮大な世界観が、伝統的な自動車メーカーから発信されることは多大な革新性を感じずにはいられない。
勇気づけられたのは、トヨタ自動車がCESの中で中心的な存在だったことだ。米子会社TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュー)は、レベル4の自動運転車「Platform 3.0」を展示し、技術の高さをアピール。豊田章男社長がプレゼンターに立ち、「e-Pallet(イーパレット)」を表明し、モビリティー・サービスのプラットフォーム企業を目指すメッセージを発した。
e-Palletは多目的な移動スペースとして、ライドシェア、輸送などに用いられる都市交通のプラットフォームとなる車両だ。米アマゾン(アマゾン・コム)、米ウーバー(ウーバー・テクノロジーズ)、滴滴(滴滴出行、ディディチューシン)ら異業種とパートナーを形成しモビリティー・サービスを開発していく考えだ。
世界に先駆け、2020年東京五輪でレベル4自動運転技術での稼働開始を目指す。
直後に、米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーは、CESの壮大なスケールとは異なった。デトロイト3のブースは電動化もコネクテッドとも最も距離がありそうな、伝統的な新型ピックアップとスポーツ・ユーティリティーがずらりと並んでいただけだ。モデル循環の偶然も重なるが、あまりにも対照的な姿である。
構造的なトラックシフトで米自動車産業は活況を呈している。高採算のトラック収益を未来のモビリティー革命の技術と事業に惜しみなく再投下している。
この行動を加速化させるのが、好調な株式市場に気を吐く株主圧力だ。米企業がこの圧力に迎合している感は否めない。何が株価対策で本質的な変革がどこか。冷静に見極めなければならない部分があると感じる。
日本の上場企業は安定した株主構造の中で、短期的な株主圧力が比較的弱い。長期を見通した安定した経営を実施できるが、同時に、それは甘えにも通じやすい。時代の変化をかぎ分け、将来を見据えた戦略的な判断が求められるだろう。
【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に『トヨタ対VW』など。