セルロース活用の海水浄化装置 タマと東京海洋大、陸上養殖真珠を共同開発
真珠関連事業を展開するタマ(東京都品川区)は、東京海洋大学(同港区)の延東真教授と共同で、陸上養殖真珠の開発に乗り出した。同教授が開発した水の交換を不要とするシステムを活用。海水が近くにないような場所でも真珠を養殖できる環境を提供する。プラントメーカーなどと連携しながら2020年までに事業化を目指す。
水槽で魚介類を飼うとアンモニアが蓄積する。放置しておくと魚が弱ってしまうため、水の交換による対策が必要となってくる。しかし、漁業権などが絡んでいるため海水を容易に取水できず、陸上での魚介類の養殖は困難なのが現状だ。
延東教授が開発した装置は、植物繊維などの主成分であるセルロースを活用しアンモニア対策を講じる。海水が循環し続けるのに加え、フジツボなどの生物が発生しないので、メンテナンスの負担が少なくて済み、初期コストも抑制できる。
タマの森永のり子社長は、宝飾品大手のミキモトなどに勤務した後、独立した。日本真珠振興会が主催する「パールデザインコンテスト」を発足させるなど、“真珠畑”を歩んでいる。
ただ、真珠養殖産業を取り巻く環境は厳しい。典型的な3K職場で高齢化が進み、後継者の確保は難しく、生産者も減り続けているからだ。また、台風の数が多くなるなど気象面からの不透明感も増してきた。
こうした現状を目の当たりにし、陸上での養殖を目指していたところ延東教授の技術と出会い、本格的な実用化を目指すことになった。大量生産による値崩れが発生しないように、量をコントロールしながら事業を進めていく計画だ。
事業が軌道に乗れば「雇用の場も広がり、地方創生につながる」と延東教授はみる。また、障害者の自立に農業を活用する「農福連携」に比べて遅れていた、「水福連携」を後押しする可能性もある。
米国のトランプ大統領が昨年11月に日本を訪れた際、メラニア夫人が東京・銀座のミキモト本店を訪れたことから分かるように、真珠は日本を代表する高級ブランド。森永社長は「これからロシアや中国からの引き合いはさらに強くなる。市場の伸び代は大きい」と話している。
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