【スポーツbiz】“還暦”の宮崎キャンプ、地方創生のモデル

 
キャンプインを控え合同自主トレのため宮崎入りした巨人・坂本勇人。後ろは菅野智之=27日、宮崎空港

 プロ野球12球団が2月1日、一斉にキャンプインする。

 今年、読売ジャイアンツが宮崎でキャンプを始めて60年目にあたる。記念行事として、10日にジャイアンツと昨年の日本一、福岡ソフトバンク・ホークス(前身の南海、ダイエーを含む)OB戦が「KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎」で予定されている。

 長嶋茂雄さんと野村克也さんがそれぞれのチームを率い、往年の名選手が登場する。一目見たいと思う人も少なくない。前後した期日、宮崎市内のホテルは満室の盛況。それも、日ごろは1泊5000円ほどのホテルがなんと5倍近い値段をつけた。友人のベテラン記者は鹿児島に泊まり、宮崎に通うという。

 ジャイアンツは1959年から、ホークスは2003年秋から宮崎市でキャンプしており、その縁から企画されたOB戦である。市をあげた熱意と支援が熱気を生みだしたといえよう。

 新婚旅行の名所

 古い話だが、宮崎は1960年代、新婚旅行の地として知られていた。数多くの若いカップルが関東や関西では味わえない冬でも温暖な気候や情緒にあこがれた。59年にご成婚された当時の皇太子ご夫妻、今の天皇、皇后両陛下が翌60年にこの地を訪問されたことが先駆けといわれている。

 新婚旅行先としての宮崎はしかし、その後、衰退していく。経済成長の余慶を受けた人々の目がハワイをはじめとする海外や沖縄に向き、価値観の多様化がそこに拍車をかけた。

 一方、ジャイアンツのキャンプは王貞治現ソフトバンク球団会長が早実高からジャイアンツに入団した年から始まった。ONを頂点とするジャイアンツ人気に乗り、集客の起爆剤となったのはいうまでもない。やがて温暖な気候に広島東洋カープ(日南市)、かつての近鉄バファローズ(日向市)など宮崎県でキャンプするプロ野球チームも増えていった。

 ところが、キャンプ地としては後発の沖縄県が台頭。実施球団数を増やしていくにつれ、宮崎県に危機感が生まれた。広島や巨人の1軍までもが期間中の前後半、沖縄に移動して練習するようになった。

 このままでは新婚旅行先の二の舞いになりかねない。そこで宮崎県では、県挙げてプロ野球キャンプへの協力体制強化と施設の充実を打ち出した。さらに施設を活用し、Jリーグや韓国プロ野球のキャンプ、社会人や大学の野球部、サッカー部などの合宿誘致も始めた。

 合宿するチームが多ければ練習試合の相手に事欠かない。それが利点として広がればさらなる“集チーム”につながる。

 Jリーグも20クラブ

 いま宮崎市では両球団に加えてオリックス・バファローズもキャンプをはる。バファローズは22年間キャンプしていた沖縄・宮古島から移ってきた。離島ゆえの不便さが大きな理由である。また、カープと埼玉西武ライオンズが日南市に拠点を置くほか、東京ヤクルトスワローズ(西都市)と東北楽天ゴールデンイーグルス(日向市)の2軍がキャンプをはる。さらに韓国プロ野球2球団、Jリーグ20クラブが集まる盛況ぶりだ。

 宮崎県では毎年11月、前年のスポーツ関連の経済効果、PR効果を算出している。

 2017年春季は126億6100万円と、前年より18億600万円減少した。しかし、キャンプ報道をCM・広告料金に換算したPR効果は87億9100万円とはじき、前年比プラス11億9200万円と発表した。ちなみに沖縄の17年キャンプの経済波及効果は109億5400万円(りゅうぎん総合研究所)である。

 そんな宮崎県には「スポーツランド推進担当」職員が置かれ、スポーツ合宿誘致のための広報・営業活動を行う。スポーツ資源を持つ県内の各市町村と連携し、数々のスポーツイベントも企画している。2軍や韓国チームも参加する春の「みやざきベースボールゲームズ」、秋に開く「みやざきフェニックス・リーグ」はその成果である。

 かつて宮崎のスポーツ事情を調査した早稲田大スポーツ科学学術院の武藤泰明教授は「宮崎に目が向くのは集積が集積を生んだ効果。長い目で見ると集積は続かないものだが、当事者の努力によって変わる」と説く。

 60年前、ジャイアンツのキャンプで始まったスポーツのDNAの開花とはいえまいか。最近叫ばれているスポーツによる地方創生のモデルである。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)