【マネジメント新時代】“時代の要請”、「MaaS」が新しい都市計画の起爆剤に

 
ロンドン・タクシー(右)とスマホに表示されたウーバーのアプリのロゴ。ライドシェアの延長線上にMaaSがある(ブルームバーグ)

 □日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎

 前回、当欄で紹介した、公共交通機関やレンタカー、タクシー、レンタサイクルなどを組み合わせて人の移動を行う「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」。背景には最近の新技術、コネクティッドカー、自動運転技術、電動化などの進展により、モビリティーを所有するのではなく、サービスとして考えることが望ましいのではとの考えがある。今回は、このMaaSがわれわれに何をもたらすのか考えてみたい。

 時代の要請

 これまでも、時代を反映する言葉やムーブメントは生まれてきた。筆者の関係するものでも、2010年代の電気自動車(EV)ブーム、その後はスマートシティ、米ウーバー・テクノロジーズなどのライドシェアリング、そして直近は自動運転車などなどである。多くは単なるはやり言葉ではなく、その後もムーブメントは続いている。

 そして、MaaSも昨秋頃から急激に広まってきた。確かにこれまでモビリティー、つまり移動用の乗り物はそれぞれに存在していた。自家用車、タクシー、バスや地下鉄、鉄道も然りである。しかし、近年のコネクテッドカー、つまり乗り物がつながるというビジネスの進展により、それぞれが単独で存在するよりも、つなげて大きなビジネスの塊として考えていくというのは自然であろう。

 それに拍車をかけているのが、まだ実証試験の段階にある自動運転車である。先般、日本政府は自動運転車の本格導入に向けて、法整備を進めることを公表した。現在のレベル1、2といわれている初期段階から、多くをコンピューターが管理し、人はシステムの要求に応じて関与する段階(レベル3)、もしくはさらに進んで全ての運転操作を自動化する段階(レベル4)へのステップとなる。

 また、欧米や中国ではウーバー、滴滴出行などのライドシェアリングも一気に普及してきた。日本ではまだ許容されていないが、海外では、タクシーがなかなかつかまえられない地域、もしくは意図的に遠回りをして料金をぼったくるようなタクシーより、安心したサービスを求める人々から支持され、拡大してきたように思える。

 そしてMaaSの登場である。もともと、フィンランドや英国にて、ライドシェア、バス、タクシー、鉄道などはこれまでも存在しているが、それぞれに時間的、空間的、物理的にメリット、デメリットなどの制約があり、これを補って一つのサービスとして取り扱えないかとのアイデアが生まれてきた。聞くところによれば、既に「MaaSオペレーター」などの統合サービス事業者も生まれ、ユーザーに最適な移動サービスを提供するようになっている。

 街づくりにも影響

 そして、EV、コネクテッドカー、自動運転車などモビリティーのあり方が変わると、動線が変わるだろう。都市計画の専門家は、これまでの道路、ビルといった縦横の区分けから充電インフラや自動運転車などの登場により建物とモビリティーの関係も変わると予測している。

 振り返ってみれば、日本は1964年の東京オリンピック前後の高度成長時代に建設された道路や都市計画が多い。既に50年以上の年月がたち、修復はしているものの、老朽化は否めない。成長著しい上海など海外の新しい都市と比べても、都市計画やモビリティーのリノベーションが必要に思われる。

 新しい概念MaaSに関して、日本は、一歩欧州に出遅れた感はあるものの、モビリティー技術や各種交通機関の技術・整備網では決して欧米中に引けを取らない。このため、MaaSは、都市計画も含め、もっと大きな投網でかけ、新しい時代を形作るコンセプトの柱とすることは面白いのではないか。また日本経済の閉塞(へいそく)感を打破する起爆剤としても有効であろう。

 まだ、MaaSは人によってとらえ方も異なり、いろいろな意見がある、ある意味生まれたばかりのムーブメントである。しかし、今年を実質のスタート年とし、今後10年以上の大きなうねりとなっていくのではないだろうか。今後は、大規模な実証試験などによって検証し、将来の街づくりが計画されることに期待したい。

【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。61歳。福井県出身。