【Sakeから観光立国】海外の日本酒教育者招聘事業

 
酒類専門家の研修参加者たち=広島県東広島市

 □平出淑恵(酒サムライコーディネーター)

 日本酒の主管である国税庁は1月19~22日の4日間、酒のスペシャリスト(酒類専門家)の日本酒研修招聘(しょうへい)事業を行った。筆者は事業の企画コーディネートを担当し、研修にも同行した。

 酒類専門家は海外で酒類業に携わり、海外市場に影響力を持つ人たちだ。今回は、世界各地から募った11人が参加した。出身国・地域別では、カナダ1人、アメリカ2人、ブラジル1人、中国1人、香港1人、マレーシア1人、ニュージーランド1人、イギリス1人、フランス2人。

 訪問した蔵は、「白老」醸造元の澤田酒造(愛知県常滑市)、「蓬莱泉」醸造元の関谷醸造(同設楽町)、白鶴酒造(神戸市東灘区)、「龍力」醸造元の本田商店(兵庫県姫路市)、賀茂泉酒造(広島県東広島市)の5社。さらに招聘事業に併せて各滞在地では、多数の蔵元との交流会も設けられた。各蔵元が自慢の酒を地元の食材とともに振る舞い、これから海外で日本酒と酒処である日本の各地方の魅力を発信する人材との交流を楽しんだ。

 また、日本最大の精米メーカー、全農パールライス(東京都千代田区)の灘工場(神戸市東灘区)を訪問。説明会場には、招聘者の出身国である9カ国・地域の小旗がテーブルに飾られ、その歓迎ぶりに招聘者の顔はパッと輝いた。

 日程のフィナーレはハイライトとも言える、広島県東広島市の独立行政法人酒類総合研究所での研修だ。酒類関連のわが国唯一の公的研究機関で、研究者の専門的な講義に招聘者一同は感激し、研究所スタイルの利き酒研修も体験した。

 各訪問地で歓迎された招聘者が口々に語っていたのは「この招聘を誇りに思う」ということだった。毎年伸びてはいるとはいうものの、日本酒輸出は全生産量のわずか3%に過ぎず、海外市場はまだまだ小さい。

 海外市場開拓には、各国の酒類のキーマンである酒類専門家が日本酒の啓蒙(けいもう)に誇りをもってあたってくれることが大切になる。そうした意味で、この招聘事業は大成功と感じた。

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【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年、日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年、コーポ・サチを設立、社長に就任。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のアンバサダー。日本ソムリエ協会理事、日本酒蔵ツーリズム推進協議会運営委員、昇龍道大使(中部9県のインバウンド大使)などを務める。