未来の上客“青田買い” 不動産や鉄道会社、学生向け住宅の参入加速
受験シーズンが終盤にさしかかる中、1人暮らしを始める学生をターゲットにした住宅関連事業への参入が加速している。東急不動産が21日、学生向け住宅ブランドの1号物件を東京都内で公開したほか、私鉄各社も学生の沿線居住を促進する取り組みを進める。開発の選択肢が広がる効果のほか、潜在顧客を囲い込む狙いもあるようだ。
西武池袋線東長崎駅から徒歩7分。閑静な住宅街に3月の開業を予定するのは東急不動産が開発した学生向け賃貸住宅「キャンパスヴィレッジ椎名町」。合格発表も出そろわない2月中旬段階で全167室のうち約7割の入居が決まった。
好調の要因はニーズをくみ取った仕様だ。個室はコンパクトながら約7割が浴室とトイレが別の間取りで月額1万7000円の上乗せで栄養士が献立を考えた平日の朝夕食が付く。玄関や各階、個室の3重ロックも備えて安全面にも配慮した。入居を決めた三重県在住で高校3年の女子学生は「共有スペースが広くて友達ができそう」と新生活に期待を膨らませる。
少子高齢化にもかかわらず、学生数は進学率の増加などもあり横ばいで推移しているほか、分譲住宅では開発が難しい立地でも学生向けなら採算がとれるケースもある。たとえば分譲住宅では駅近用地の確保が開発の成否を分けるケースも多いが、不動産情報提供のアットホームの調査では4分の1以上の学生が、最寄り駅までの所要時間が20分を超える物件に住んでいるという。
市場縮小の中、将来顧客を囲い込む狙いもある。東急の担当者は「学生向けの開発で住宅に関わる全ライフステージを網羅できた」と胸を張る。今後は学生が退去する際に、同社の賃貸住宅でかかる費用を割引する仕組みも検討する。
鉄道事業者が狙うのは沿線地域の活性化だ。小田急グループが3月に入居開始する湘南台駅前の学生向け賃貸住宅「NODE GROWTH(ノード・グロース)湘南台」は、共有スペースで地域住民が参加するイベントを開催する。西武鉄道は西武線沿線の街の魅力を伝えるフリーマガジン「西武鉄道Walker2018春号」を1月中旬に発行。他路線よりも割安とされる家賃相場なども掲載し、学生を引き込む。
西武の担当者は「学生時代に慣れ親しめば社会人からも住み続けてもらえる。消費のボリュームゾーンが沿線に住むシナジーは大きい」と話している。
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