ネットの高校「N高」が高校生ベンチャー支援する起業部発足 VRで認知症を予防するプロジェクトなど採用

 
N高等学校の奥平博一校長らと記念撮影にのぞむN高起業部入りを目指す生徒

 学校法人角川ドワンゴ学園(本校・沖縄県うるま市)が運営するネットの高校「N高等学校」で、高校生によるベンチャーを育成するプロジェクト「N高起業部」が発足。2月5日に特別審査会が行われ、5チームが入部を認められて起業家候補としてスタートを切った。スマートフォンを使うダンボール製のVRゴーグルを使い、高齢者に懐かしい風景などを見てもらって認知症予防につなげるプロジェクト、心身に障害を持つ人が誰かに自分のことをわかりやすく伝えるツールを作るプロジェクトなどが通過。今後はベンチャー支援のプロによるサポートや、年間最大で1000万円の資金援助を得て実現に向け活動していく。

 審査員を務めた ドワンゴ取締役の夏野剛氏が「下調べをして、どの隙を自分たちが 突いていったら成功するかを見つける気迫があまり感じられない」と講評し、同じく審査員で、SNS media & consultingファウンダーの堀江貴文氏も「微妙なプランが多い」と講評。2月5日に東京都内で行われた「N高起業部」への入部を審査する生徒たちのプレゼンテーションに、起業や事業化のプロたちは厳しい声を投げかけた。

 角川ドワンゴ学園理事でカドカワ社長の川上量生氏も、「実際に行けるかどうかを問うと、非情に厳しいものだと思う」と講評。それでも5チームを選んで起業部メンバーとして支援を行う理由を、川上氏は「プロの企画もほとんどがどうしようもない。そうした中から成功するものも生まれる」と説明した。

 書類によるエントリーや最終プレゼン大会を経て選ばれた7チームが臨んだ特別審査会。あるチームが提案した「1000円VR」は、高齢者が懐かしいと思えるような場所を面談で聞き出し、VRでその風景を体験してもらって記憶を刺激し、認知症の予防につなげようというものだった。夏野氏から「医療行為になるが医者の指導を受けなくていいのか」といった質問があり、チームでは大学などの研究機関と連携して効果を測っていくことを訴えていた。

 実現性が高そうだったのが、「『こまった』を『よかった』に ~障害者支援Project~」と銘打たれた提案。プレゼンテーションを行った2人の女子生徒が、自らをADHD(注意欠如多動性障害)であったり、人前でうまく話せなかったりすることを明かし、自分たちの悩みを解決したいという思いから、ノートに自分の状態を記入してコミュニケーションを取る仕組みを考案した。

 その日に起こった出来事を、ノートにあらかじめ書かれてある選択肢から選んでチェックする。自分の気持ちも該当する似顔絵にマルをつけて表現する。こうすることで、長い文章を綴れなくても、誰かに自分を分かってもらえるようになる。ノートだけでなくアプリ版も視野にいれているとのこと。これには夏野氏から、「ノートをスマホで撮影するだけでデータがセンターに蓄積されて、アラートが届くようにしたら」といったアドバイスがあった。

 ネットを活用したサービスでは、シェフが自分のお気に入りをインスタグラムの画像も使って薦める「CHEFDELI」も提案された。審査員から「ヒトサラ」のようなサイトがすでにあると告げられたプレゼンターは、より多くの情報発信をシェフにしてもらうと反論。「シェフは忙しい」と夏野氏から異論が寄せられたが、可能性を買われて5件のうちに残った。

 和式トイレの上にイスのようなものをかぶせて洋式トイレとして利用できるようにする「和式洋式化計画」、ナノ・マイクロテクノロジーを活用して工作や研究などが行えるスペースを設置するプロジェクトは残れなかった。いずれも先行する製品やサービスがあって、審査員から下調べの甘さを指摘されていた。

 川上氏は、当落を決める基準に「自分たちが何をやりたいか分かっているか、そのことを信じているか」があったことを挙げ、「自分がどうしたいかを、他の人に実感として伝えることができるかが重用」と話した。夏野氏は、「使ってくれる人の気持ちにどれだけ立てるかが重要。突き詰めて考えないで出てくる商品やサービスは売れない」と指摘し、「大人の事情など関係なく突き詰められるのは高校生の今。徹底的に使う人の立場に立った製品を考えよう」とアドバイスした。

 「大人に相談すると『まだだ』と言われるが、そういうところにチャンスがある」と夏野氏。「これが成功する企画というものがあれば、とっくに誰かがやっている。成功するかどうかが分からないのは当たり前。この人にかけていいかという判断は、信念を持っていて、それをきちん と形として表せるかだ」と川上氏。「これはだめだと思ったら、違うプランをすぐに考え行動すること」と堀江氏。起業や事業化のプロたちによるこうした激励は、高校生に限らず起業や企画立案に臨む人に共通するアドバイスとなっていた。