食べ物の形を残す「新しい介護食」 やわらか食で健康寿命を延ばす海商の社会貢献
かむ力が弱くなった高齢者でも食べやすい加工食「海商のやわらかシリーズ」は、百貨店内での高級鮮魚店運営、食品ギフト販売を手掛ける海商が乗り出した新規事業だ。日本介護食品協議会が制定した規格「ユニバーサルデザインフード(UDF)」に適合し、「新しい介護食」とも紹介されるが、高橋宏和社長は「介護食を目指したわけではない」と強調する。
調理法を組み合わせ
--「やわらかシリーズ」のラインアップは
「発売は2016年。これまでに冷凍食品で32点を展開し、今年は25点を追加する。初年度は贈答用に高級路線を意識したが、今は500円以下で買える一般的な総菜も加えている。イワシ煮付け、サバみそ煮などの魚料理に加え、和風ハンバーグ、ローストビーフなど肉料理、ナスの煮びたし、おひたしなど副菜と幅広く取りそろえ一部は常温販売の商品もある。贈答向けによく売れたが店頭販売も好調だ。業務用では正月用のおせち料理の一品に加えてくれた業者もあった。2年続けて目標の売り上げを突破できた」
--着目したきっかけは
「大阪と京都の百貨店内で鮮魚店を運営しているが、主要顧客は高齢者で、数年前からアワビの売れ行きが落ちていた。常連の女性客から『好きやねんけど、固くて食べられへん』といわれ、加齢に伴ってかむ力や飲み込む力が弱まり食べづらくなることで避けられる食材があることに気付いた。このままでは経営にも影響があると、食べやすい加工食の開発に着手した」
--おいしさを保ちながら、食材をやわらかくするコツは
「熱、圧力、酵素という昔からある調理法を組み合わせた。そのため、大きな設備投資をする必要はなく、社内ではローテクなイノベーション(技術革新)と呼んでいる。一般的な介護食では、刻んだり、ミキサーにかけて成形したりすることで食べやすくしているが、食べ物の形を残すことにこだわってきた。委託先の工場で加工を行っているが、各工程を細分化し、全工程を外からは見えないことにすることにより、当社独自の製法になっている」
元気なうちに栄養を
--人気の秘密は
「高齢で食べづらくなったとしても、いきなり介護食というのは抵抗があるだろう。その間を埋め、食べる楽しみを残したという点がやわらかシリーズの特徴だ。65歳以上の多くが食べにくくなった肉や魚を食べず低栄養状態に陥ったり、その恐れがあるというデータがあるそうだ。低栄養は筋肉の衰えから寝たきりにつながる可能性があるという。体が元気なうちに、やわらかシリーズを食べてもらうことで健康寿命を延伸し、社会貢献ができると考えている」
--今後の事業戦略は
「どうやって世間に認知してもらうかが課題だ。そのため、ビジネスコンテストには積極的に参加し、多くの賞や認定をいただいている。今後は、介護施設や調剤薬局なども新たな販路として拡大したい。加工工程の特許申請も進め、大手企業との提携などにも対応できるようにする。現在は委託生産だが、販売拡大が進むなかで利益を確保するため、将来的には自社工場での生産も検討している」
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【プロフィル】高橋宏和
たかはし・ひろかず 関西学院大卒。ナショナル証券(現SMBCフレンド証券)を経て、1994年ヒノデ魚販を設立。2008年、会社分割して活魚黒門を立ち上げ、14年に海商に社名変更。55歳。大阪府出身。
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【会社概要】海商
▽本社=大阪市中央区日本橋2-1-22
▽設立=2008年3月3日
▽資本金=5255万円
▽従業員=20人
▽事業内容=鮮魚小売、食品ギフト販売、ライフケア食品
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