ブリヂストン、ビッグデータ分析人材育成 ビジネス提案の新サービス

 
ブリヂストンでデータ分析を行うデータサイエンティスト=東京都中央区(同社提供)

 ブリヂストンが、事業活動や顧客から蓄積したビッグデータを解析しビジネスの改善や新製品開発に役立てる専門人材「データサイエンティスト」の社内認定制度を年内に始めることが5日、分かった。約100人の社員をデータ分析のプロとして認定する。主力のタイヤ業界はアジア勢の台頭で販売競争が激化しており、単品売りの消耗戦から脱却しデータを生かしたサービスに活路を見いだす。

 認定制度を整備

 同社は主にタイヤに付けたセンサーから集めた膨大なデータの解析に統計学や人工知能(AI)などを活用し潜在的な顧客ニーズを探し出し、ビジネスにつなげる戦略を進める方針。

 そのために必要な技能を教える研修プログラムを昨年導入、既に販売や研究などの各部署から集めた約40人をデータ分析人材として育成した。さらに来年前半までに約60人を育てる。

 これに伴い研修修了者をデータ分析プロとして認定する新制度を年内に整備する。具体的には、分析人材育成を支援するデータサイエンティスト協会(東京都港区)が求める技能を参考に社内基準を策定。データを使いこなす力を「見習い」「独り立ち」「組織の課題解決につなげる」「業界の課題解決につなげる」-という4段階で評価し、まず約100人を「独り立ち」として認定したい考えだ。

 ビッグデータの活用は商機拡大が狙いだ。現在も鉱山で使うダンプカー用タイヤに空気圧や温度を測定するセンサーを取り付け、溝の状態などタイヤの使用状況と合わせて常時把握。そこから集めたデータを分析してタイヤの適切な交換時期の提案につなげるほか、商品開発にも生かしている。

 同社はこうした事業展開を加速するため昨年、タイヤ事業の枠を超えたビジネスを開発する社内組織「デジタルソリューションセンター」を新設しており、今回育てる分析人材は同組織の活動の受け皿ともなる。

 タイヤ市場激化

 タイヤ市場では近年、中国などの新興メーカーが競争力を高めている。世界1位の市場シェアを維持するブリヂストンだが、同センターを担当する三枝幸夫執行役員は「製品性能だけでは新興勢との差別化が難しい。顧客の困りごとを解決し新しい価値を届ける会社に転換したい」と、ビッグデータ活用を急ぐ背景を語る。

 一方、データサイエンティストの草野隆史代表理事も今後は「市場に出た製品などからの膨大な情報を商品やサービスの開発につなげる人材の力が企業競争を左右する」と指摘している。(臼井慎太郎)