【高論卓説】ウェブメディアPVに新ガイドライン
■横並びで比較 透明性向上を期待
新聞・雑誌の実売部数を公査し、発表している日本ABC協会は2月28日、「雑誌ブランド指標」に関する新しいガイドラインを発表した。新ガイドラインには、ウェブメディアの透明性を高める先進的な項目が盛り込まれている。各ウェブメディアが読者にみられている月間のページ総数であるページビュー(PV)を公表する際の基準を「自社サイトにおけるPV」と「外部配信先におけるPV」を明確に切り分けて公表するように決めたのだ。
ということは、これまで公表してきたPVにはばらつきがあったということ。今回の改定前に各出版社にアンケートを実施したところ、算出根拠にばらつきがあり、自社サイトのPV数とヤフーニュース、スマートニュース、LINEニュースなど外部配信した先でのPV数値を足し合わせているケースもあったという。
つまり、多くのウェブメディアがメディアパワーを示す指標として月間PVを公表しているにもかかわらず、その基準は自己都合だったわけだ。今回、ガイドラインができることにより「透明性」はグンと高まる。
言うまでもなく、ウェブメディアには雑誌系もあれば、新聞系、テレビ系、独立系などさまざまなブランドがある。今回は、そのうちあくまでABCの公査に参加している雑誌系メディアに限った取り組みだ。
しかし、この取り組みは雑誌系以外のウェブメディアにも影響を与えるに違いない。広告主の視点からみれば、横並びで比較できない透明性を欠いた指標など意味をなさない。テレビにおける「視聴率」、(紙の)新聞・雑誌における「発行部数」はそれぞれ課題があるにしても、横並びで比較できる指標。ウェブメディアは巨大化しているにもかかわらず、横並びで比較できる指標がないのだから異常事態である。早急にウェブメディア共通の指標づくりも必要だ。PVだけでなく、滞在時間、ID会員数、有料会員数などについても、開示ガイドラインを設けていく必要があるだろう。
指標の開示に関して、雑誌業界が先行しているのには、理由がある。背景にあるのは雑誌販売の激しい落ち込みだ。ガイドラインの改定を取りまとめた講談社の長崎亘宏ライツ・メディアビジネス局次長は「3.1%」という数字を示すことで危機感を表現する。
電通が2月22日に発表した「日本の広告費(2017)」によれば、雑誌広告費は2023億円で日本の総広告費のわずか3.1%。メディア環境研究所発表の「メディア定点」によれば、雑誌との接触時間も1日当たりのメディア接触時間においてもわずか3.1%なのだ。
「確かに、紙の雑誌は3.1%かもしれないが、ウェブなども含めた雑誌ブランドの比率はそうではないだろう」と長崎局次長は主張する。そこでABC協会では15年下半期のリポートから雑誌ブランドを冠したウェブメディアのPVとUU(ユニークユーザー)などを掲載するようになった。今回は、その透明性をさらに高めようという試みである。
雑誌系ウェブメディアである東洋経済オンラインの編集長を務める筆者は、透明性を高める試みを先取りして推進したいと考えており、昨年10月からは自社サイトで読まれた総ページ数である「純PV」とヤフー、スマートニュースなど外部配信先も含めた「総PV」を公表している。ガイドラインの改定を契機に、この動きが多くのウェブメディアに広がっていくことを期待したい。
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【プロフィル】山田俊浩
やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。週刊東洋経済の編集者、IT・ネット関連の記者を経て2013年10月からニュース編集長。14年7月から東洋経済オンライン編集長。著書に『孫正義の将来』(東洋経済新報社)。
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