VRで災害実感、地域力育成 東日本大震災7年 先進技術で教訓呼び起こす
東日本大震災から間もなく7年を迎えるのを前に、不動産各社が再開発を手がける東京都心部の主要エリアで大規模な防災訓練を実施している。企業と周辺住民の双方を巻き込んだ“大家”ならではの動員力に加え、仮想現実(VR)の先進技術などを活用したリアル感が特徴だ。都市機能が大打撃を受けた震災の教訓を呼び起こす効果のほか、エリアの価値向上につなげる狙いもある。
「火事だ!」。東京・日本橋の東京メトロ三越前駅の地下歩道に切迫した声が響いた。三井不動産などが7日開催した防災訓練。VRゴーグルを着けた小学生が消火器を引き寄せ、仮想上の炎を消し止めた。体験した児童は「炎が本物みたいで、ちょっと焦ったけど練習になった」と満足そうにうなずく。
訓練はVR体験のほか時間制限内に部屋から脱出するアトラクション、震度7を体験できるシミュレーターによる「体験型」が特徴。正午前からは老舗店によるアオサ汁の炊き出しも実施し通行客が行列を作った。
近隣企業の社員や地元住民、来街客まで、「多様なプレーヤーを巻き込めた」(同社日本橋街づくり推進部)のも日本橋に深く根を張る三井の呼び掛けあってこそ。地元町会の室町一丁目会・清水勇会長は「助け合えることが街の防災力。働く人と住民が顔見知りになる効果は計り知れない」と強調する。
住友不動産が2日、複数の再開発に参画する東京都文京区の後楽地区で実施した防災訓練も、同社の呼び掛けで、オフィスビル7棟のテナント企業を含む1200人規模で実施された。テナント企業の協力でVRを使った模擬訓練も行い、「災害に強い街づくり」をアピールした。
新開発の災害情報プラットフォーム「災害ダッシュボード」を活用して9日、大手町や丸の内、有楽町の企業による情報連携訓練を実施するのは同エリアでビル事業を展開する三菱地所。エリア内の駅周辺や施設における帰宅困難者の滞留人数や負傷者対応状況などの情報を集約でき、街全体で人員や物資などの配置を最適化していく。
明治大学危機管理研究センターの市川宏雄所長は「地域の災害対応力を高めるには、先進技術の導入や幅広い連携が前提。政府も責任範囲に関する法制度整備で企業参加を後押しする必要がある」と話している。(佐久間修志)
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