【木下隆之のクルマ三昧】クラッチの次はブレーキペダルが消える? ドライビングに革命 運転はアクセルペダル1枚で十分!?

 
氷結湖面を走る日産リーフ

 先月、長野県女神湖で開催された「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY 氷上・雪上試乗会」に参加した。そこで新型リーフに採用されている「e-Pedal」を体験して腰を抜かしかけた。運転席からクラッチペダルが消えそうになって久しいが、今度はブレーキペダルすらもなくなる日も近い。そう、ワンペダル時代を予感させるに十分な仕上がりだったのである。

 加速も減速も思い通り

 「e-Pedal」を体験して僕はこう思った。ドライビングスタイルにちょっとした革命が起きようとしているのだと。

 「e-Pedal」は、アクセルを戻すと、一般的なブレーキングと同等の減速Gを発生する。回生ブレーキの抵抗に加え、場面によっては機械的なブレーキも作動するのだ。最大0.2Gだというから、視界の前方に赤信号を確認したその時、そっとブレーキペダルに足を乗せるような制動感が得られる。

 一般的なガソリンエンジンが発するエンジンブレーキのDレンジではそのレベルの減速Gは得られない。わざわざギアダウンさせなければ0.2Gには達しないはずだ。

 EVモデルでも回生ブレーキによる減速フィールはそこまでには達しない。0.2Gを得るにはブレーキペダルに足を添える必要がある。

 予備知識を授かることなく運転を始めたら、思いのほか強い減速感にハッとするかもしれない。慌ててアクセルペダルを踏み直す必要もあるかもしれない。それほど明確な減速Gなのである。

 そう、それをもってワンペダルドライビングである。いちいちブレーキペダルに足を乗せ替えずに、アクセルペダルの操作だけで加速も減速も思い通りなのである。

 3ペダルは風前の灯火

 かつては3ペダルが常識だった。右から順番に、アクセル、ブレーキ、クラッチと並んだABC(英文の頭文字をとってそう表現されている)ペダルを操作するのが運転の基本だった。だがそれが、オートマチックの普及によってクラッチペダルが消滅しかかり、ABペダル時代になりつつある。少なくともAT普及率の高い日本では、3ペダルドライブは昭和のスタイルだ。

 オートマチックに似た機構として、クラッチ操作をロボットが代行する2ペダルマニュアルミッションも普及が進んでいる。もはやレースの世界でも2ペダル時代なのである。

 将来的にブレーキペダルも消滅!?

 これをもっと追い込んだらどうなるだろうかと想像してみた。リーフのe-Pedalは、いわゆる回生ブレーキによる減速感に加えて作動するブレーキ制動力をさらに強めに設定することは技術的には難しいことではない。ABSが作動するような急ブレーキすら可能なのである。

 そうなったらもう、アクセルペダルはアクセルペダルと呼べずに「アクセル&ブレーキペダル」になる。最終的にはブレーキペダルの存在がなくなるかもしれないとも想像してしまう。まさに革命である。

 数年後、今の若い世代が自動車免許を取得する頃にはこんな会話が交わされているかもしれない。

 「昔はね、クルマにブレーキペダルがあったんだってさ」

 「なにそれ。信じられない…!」

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【木下隆之のクルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は隔週金曜日。

【プロフィル】木下隆之(きのした・たかゆき)

レーシングドライバー 自動車評論家
ブランドアドバイザー ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。