鉄鋼メーカーとNEDO、試験高炉で製鉄新手法の検証終了
■CO2排出3割削減目標に前進
新日鉄住金などの鉄鋼メーカーと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、鉄を作るときに生じる二酸化炭素(CO2)の排出削減を目指す技術開発プロジェクトで、試験高炉を使った検証をこのほど終えた。同プロジェクトは、鉄鉱石から酸素を取り除く際に水素を還元剤として使う新たな製鉄手法と、副生物の高炉ガスからCO2を分離・回収する技術から成る。試験操業は予想以上の成功を収め、目標とする3割の排出削減に大きく近づいた。
工夫重ねコストも抑制
新日鉄住金などは「COURSE(コース)50」の名称で同プロジェクトを2008年から実施。JFEスチールや神戸製鋼所も参加している。
12年までの「フェーズ1ステップ1」では、要素技術の開発に取り組んだ。次の「ステップ2」では、新日鉄住金君津製鉄所(千葉県君津市)内に約80億円をかけ、試験高炉では世界最大規模となる容積12立方メートルの高炉を建設。17年度までの2年間で計4回の試験操業を行った。高炉で1割、副生物の高炉ガスからCO2を分離・回収する技術で2割の排出削減を目指している。
高炉に入れた鉄鉱石を、石炭を蒸し焼きにしたコークスのガスと反応させ、酸素を奪うと、鉄だけを取り出せる。この「還元反応」の過程でCO2が排出されるが、その量は鉄の生産量に比例し、削減努力には限界がある。もっとも、これとは別に、コークスの一部を水素に置き換える「水素還元法」と呼ばれる方法がある。この方法なら酸素と反応しても水になるので、環境負荷が少ない。
ただ、高炉内部に水素を吹き込むと、鉄鉱石が粉状になって炉内に充満し、水素や熱風が流れにくくなる。また、反応が進むと吸熱反応によって炉内の温度が下がり、熱不足に陥ってしまう。ステップ2では操業条件を工夫してこうした弱点の克服に努めたほか、炉内に投入する鉄鉱石などの品質を高めるといった工夫も重ね、試験操業ながら1割削減を達成した。
一方、CO2分離・回収でも目標達成のめどをつけた。低温での反応性に優れた吸収液を改良。製鉄所からの未利用廃熱を有効利用する技術などを組み合わせた結果、分離・回収設備の配置や高炉の操業条件が変わっても、1トン当たりの回収コストを2000円以下に抑えられる見通しがついたという。このほか、試験高炉からの高炉ガスを分離・回収設備に通気するなどして、より実際の運転環境に近い条件で処理速度などを検証。分離・回収設備と試験高炉の連携に問題がないことを確認した。
容積大きい「商用」課題
もっとも、課題は残る。商用高炉は容積が最大5000立方メートルと、試験高炉の数百倍もある。試験操業に成功したからといって、商用高炉でもうまくいくとは限らない。このため今後8年間の「フェーズ2」では引き続き炉内の通気性確保に努める考え。プロジェクトリーダーを務める新日鉄住金の荒木恭一製銑技術部長は「炉内の複雑な反応を予測する『3次元数学モデル』と呼ぶシミュレーション技術の精度も向上させたい」と話す。
当初の計画では、数百億円をかけて100立方メートル規模のより大きな試験高炉を建設する構想もあった。だがフェーズ1の成功により、最初の2年だけ今の試験高炉を使い、その後は商用高炉を一部改修することで対応できるようになったという。
計画では、30年ごろに技術を確立し、国内高炉の大規模改修が一巡する50年までに普及させたいとしている。荒木製銑技術部長は「鉄鋼業は産業全体の中でもCO2排出量が多いからこそ、3割減らす(社会への)インパクトは大きい。もちろん、競争力向上にもつながる」と技術開発の意義を強調する。(井田通人)
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