EV使用済み電池を再製品化 日産と住友商事、国内初の専用工場開設

 
EVの使用済み電池の分解・組み立てを行う作業場。劣化の度合いが近い電池を1つのパックにそろえる=26日、福島県浪江町

 日産自動車と住友商事の共同出資会社、フォーアールエナジー(横浜市)は26日、電気自動車(EV)の使用済みリチウムイオン電池を再製品化する国内初の専用工場を福島県浪江町に開設した。従来の96分の1という短時間で使用済み電池の性能を測定する独自技術により、年2250個の電池を再製品化できる能力を持つ。また日産は同日、EV「リーフ」の電池を新品のほぼ半額で、再生した電池に交換するプログラムを始めると発表。中核部品である電池の再利用を進め、EVの普及に向けた環境を整える。

 5月から有償交換

 リーフには、複数の小さな電池で構成する48個の「モジュール」が1パックとして搭載されている。車の使われ方や温度などの環境によって、どのモジュールがどの程度劣化するかは異なる。状態の把握が重要だが、従来技術では1パックで384時間(16日間)もかかっていた。研究を重ね、これを4時間に短縮することに成功したという。

 劣化の度合いが異なるモジュールを同じパックに入れると、劣化が激しいモジュールが全体の性能を引き下げてしまう。このため、劣化の度合いを3種類に分け、同じレベルのモジュールを集める形でパックをつくる。その中で、最も劣化が進んでいないモジュールを集めたパックは、中古のリーフに搭載する。

 また、5月から始める有償交換プログラムでは、新品なら65万円の容量の電池を、30万円で提供。劣化が進んだ電池パックは、電動フォークリフトや工場電源バックアップ設備などに転用する。日産の坂本秀行副社長は「ここでつくった仕事のやり方を、世界中が見習っていくことになる」と強調した。

 フォーアールエナジー浪江事業所の従業員は10人だが、牧野英治社長は「2020年には40~50人くらいに増やし、年1万個程度を処理できるようにしたい」と述べた。工場の規模が拡大すれば、福島第1原発事故の影響による避難指示の解除後も住民の帰還が進まない浪江町の復興にも貢献しそうだ。

 中古車の価値向上も

 再利用が必要とされる背景にはEVの需要拡大のほか、原料となるリチウムやコバルトの価格高騰がある。

 また日産は、環境整備により中古EVの価値を高めたい考え。電池の劣化懸念のため、「EVの再販価格が通常の車より低めで、新車購入時の不安材料になっている」(坂本氏)という課題があった。

 EVの普及が進めば、再利用の重要性が増すのは確実だ。他社の電池の処理について牧野氏は「喜んでやりたいが、自動車会社や電池メーカーが電池の情報を開示してくれないと難しい」と話している。日産傘下の三菱自動車が参画する可能性はありそうだ。トヨタ自動車もパナソニックとの協業で、EV向け電池の再利用やリサイクルについて検討を進めている。(高橋寛次)