楽天参入で値下げ競争激化、格安スマホ淘汰も 既存事業者にないサービス期待

 
格安スマホ事業への参入を発表したときの楽天の三木谷浩史氏。19年に提供する携帯電話事業でも意欲的な戦略を描く=2014年10月

 楽天の携帯電話事業への参入が総務省に認められる見通しとなったことで、寡占状態にある市場が活性化し、利用者にとっては料金値下げやサービス充実への期待が高まる。ただ、普及の兆しが見え始めた格安スマートフォンにとっては新たな参入者の登場で競争激化は避けられず、事業者の淘汰(とうた)が進む可能性もある。

 「格安スマホが普及して携帯電話料金は安くなったが、海外と比較すればまだまだ高い」。菅義偉官房長官は2月の衆院予算委員会でこう述べ、携帯大手各社のさらなる料金値下げに期待感を示した。

 政府は携帯電話利用者の料金負担軽減に向け、大手から回線などを借りて運営する格安スマホ事業者を後押ししてきた。結果、格安スマホの3月のシェアは民間調査結果で10%を超えるなど徐々に浸透してきている。

 楽天が携帯電話事業に本格参入し、割安な料金プランの提供などで格安スマホを含む事業者間の競争が激しくなれば消費者の利点となる。小林史明総務政務官はフジサンケイビジネスアイのインタビューに「ただ(料金水準を)値下げしてほしいというのではなく、この国が前に進むためにも、携帯電話市場が活性化するような新しい事業に期待したい」と強調した。

 楽天には、電子商取引(EC)や小型無人機「ドローン」、農業など各種事業と連携した既存の携帯事業者にないサービスの提供にも期待する。

 一方、楽天の参入で独立系の格安スマホ事業者にとっては状況が厳しくなる可能性もある。格安スマホ事業は利幅が薄い上、携帯大手の子会社などが運営する格安スマホのサブブランドにも押されているからだ。

 総務省は9日開く携帯電話市場の課題を検討する有識者会議で、大手系の格安スマホのサブブランドに対して透明性を確保した事業運営などを要請する見通し。今後も格安スマホの普及を後押しする考えだが、楽天の参入は事業者にとって大きな脅威となりそうだ。(大坪玲央)