森友、タカタ…増える「コンプライアンス倒産」 脱税、粉飾など“悪しき慣習”は致命傷
業法・法令違反や脱税、粉飾決算などの「コンプライアンス(法令遵守)違反」が一因になった倒産が増加している。2017年度は製造業では戦後最大の大型倒産となったタカタ、国の補助金をだまし取った容疑で前理事長が逮捕された森友学園など、話題になった倒産も多かった。景気回復の波に乗れず、「悪しき慣習」を乗り越える体力のない企業も目立つ。(東京商工リサーチ特別レポート)
違反内容では、虚偽の決算書や不適切な会計処理などの「粉飾」が2.5倍と急増。業績改善のピッチが鈍く、経営不振から抜け出せない中小企業が多い一面を浮き彫りにした。
◆リスク管理として経営の最重要課題に
「コンプライアンス違反」倒産は、建設業法、医師法などの業法違反や特定商取引法などの法令違反、粉飾決算、脱税、詐欺・横領、不正受給などを対象に、2017年度の倒産企業から抽出した。
企業経営でコンプライアンスが重視されている。直接的な法的違反でなくとも、「倫理や社会貢献などに配慮した行動」に反した社会的な不適切行為が、消費者や取引先などの信頼を失い、業績悪化や事業継続が困難な事態に直結するケースも少なくない。経営規模を問わず、企業にとってコンプライアンスはリスク管理という観点から経営の最重要課題として認識されつつある。
2017年度にコンプライアンス違反を一因にした倒産は195件(前年度比8.9%増)で、3年ぶりに前年度(179件)を上回った。
最近5年は、2013年度が204件、14年度はピークの216件が発生し、以降は15年度が191件、16年度が179件と2年連続で減少していた。2015年度以降、企業倒産の記録的な低水準とコンプライアンス意識の浸透から、コンプライアンス違反企業の経営破綻の表面化は減っていた。
◆業績回復のピッチが鈍い中小企業
しかし、大手に比べ中小企業の業績回復のピッチが鈍いことを背景に、2017年度はコンプライアンス違反倒産が3年ぶりに増加に転じた。
今後の景気動向の次第では、コンプライアンス違反が露呈して経営破綻に至るケースが増える懸念も強まっている。
コンプライアンス違反で倒産した195件の負債総額は、1兆8775億6200万円で前年度比16倍増と大幅に膨らんだ。
これは欠陥エアバッグ問題で大量リコールから経営危機に陥り、戦後最大の製造業倒産となった自動車部品メーカーのタカタ(東京、負債1兆5024億円)と、消費者庁から1年間に異例の4度の業務停止命令を受けるなど被害者が全国に広がった磁気治療器の預託商法のジャパンライフ(東京、同2405億円)の大型倒産が押し上げたためだ。
この2社を除くと、負債1億円未満が82件(構成比42.0%)と4割を占め、小規模な企業倒産が主流だった。
◆違反の最多は「税金」、「粉飾」も2.5倍増
コンプライアンス違反で倒産した195件を違反内容別でみると、最多が滞納や脱税などの「税金」関連で69件(前年度比6.1%増、前年度65件)発生した。
税金滞納の背景には、業績不振の影響が大きいことから、景気回復の効果が中小企業まで波及していないことが窺われる。それだけに今後も滞納や脱税など「税金」関連のコンプライアンス違反の動向には留意が必要だ。
次いで、建設業法や医師法などの業法違反、出資法、特定商取引法などの法令違反、行政処分、代表者の逮捕などを含む「その他」が65件(同17.7%減、同79件)。虚偽の決算書作成や不適切な会計処理などの「粉飾」が25件(同150.0%増、同10件)で増勢ぶりが目立った。給与未払いや最低賃金法違反などの「雇用関連」も17件(同88.8%増、同9件)と増加した。
また、補助金や介護報酬などの「不正受給」は10件(同9.0%減、同11件)だった。
産業別では、最多がサービス業他の58件(構成比29.7%、前年度64件)で約3割を占めた。次いで、建設業34件(前年度26件)、製造業27件(同25件)、などで、10産業のうち7産業で前年度を上回った。
最も多かったサービス業他では、介護福祉関連が14件、飲食業関連が6件などだった。
◆介護福祉業界、不正による指定取消が過去最多
介護福祉関連の中では、経営不振から介護報酬や診療の不正請求などに手を染めたケースが目立ったほか、飲食業では食中毒事故の影響で倒産した事例もあった。
2017年の老人福祉・介護事業の倒産は、2000年の調査開始以来、最多の111件を記録した。
介護福祉の現場でコンプライアンス違反が多発している。厚生労働省の調査によると、2016年度に介護報酬の不正請求や法令違反で介護保険法に基づき指定取消などの処分を受けた施設や事業所は過去最多の244カ所にのぼった。指定取消の理由は、「不正請求」が最も多く、「書類提出命令に従わない、虚偽報告」、「介護保険法等の違反」が続く。
主な倒産事例では、3月28日に破産開始決定を受けた「あそかライフサービス」(東京、負債3億5800万円)は、有料老人ホーム、訪問介護、デイサービスを行っていたが、関連の社会福祉法人の公金横領が発覚し、同社も不正に関わっていたことで信用が低下した。最近は従業員の退職が相次ぎ、人手不足で事業運営が困難になった。
◆「働き方改革」の陰の部分も浮き彫りに
コンプライアンスの徹底が金融機関の融資条件や、企業間の取引条件にも重要な要素になっていながら、コンプライアンス違反企業は後を絶たず、2017年度は3年ぶりに前年度を上回った。
違反内容では、「粉飾」の前年度比2.5倍増が目を引くが、金融機関や取引先に正確な情報開示がこれまで以上に求められる時代では、「一時しのぎ」は隠し通せなくなっている。
さらに、政府が「働き方改革」を掲げる中で、給与未払いなどの「雇用」関連も9割増加した。業績不振の中小企業では、従業員給与の支払いが資金繰りを圧迫している陰の部分も浮き彫りにしている。
コンプライアンス違反倒産は増加している。これは、大手では「悪しき慣習」を乗り越える企業体力があるが、景気回復の波に乗れない中小企業の脆さを示す「鏡」でもある。
市場が拡大する老人福祉・介護事業でも、介護報酬の不正請求や法令違反で介護保険法に基づき指定取消などの処分を受けた施設や事業所が調査開始以来、最多を記録している。
コンプライアンス違反の発覚をきっかけに倒産に追い込まれる企業は、経営不振の企業が多いだけに、今後のコンプライアンス違反の企業動向は注視を怠れない。
【タカタ、ジャパンライフ以外の主な2017年度の倒産事例】
◇グロワール・ブリエ東京(東京、負債49億6400万円、破産)
脱毛サロン経営。脱毛サービスや支払方法などを誤認させる広告、解約金の不当な遅延、不払い等で、消費者庁から新規勧誘など一部業務の停止命令を受けた。
◇森友学園(大阪、同16億6500万円、民事再生法)
幼稚園経営。小学校開校を巡り、建設費を水増しした契約書を提出し、国の補助金をだまし取った容疑で前理事長が逮捕された。
◇マルア水産(富山、同1億8400万円、破産)
福井産ブリを氷見産などと偽って販売し、富山県からJAS法に基づく是正指示を受けた。
◇アールプラン(東京、同1億5500万円、破産)
輸入バッグ・婦人服販売。高級外国ブランドの偽物バッグなどを販売目的に所持していた容疑で社長などが商標法違反で逮捕された。
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