「キャッシュレス化」五輪で機運 官庁本腰もインフラ不可欠
ビザ・ワールドワイド・ジャパンが新たな戦略を示すなど、日本でも「キャッシュレス化」が加速する機運が高まってきている。経済産業省も今月11日に現金以外の決済比率を80%に引き上げることを目指す提言を取りまとめるなど本腰を入れ始めたが、まだ統一的な取り組みにはつながっておらず、課題も残されている。
機運が高まっている最大の要因は2020年の東京五輪・パラリンピックの開催だ。海外の多くの国ではキャッシュレス決済が一般的で、外国人の受け入れに決済のインフラ整備は不可欠だからだ。
経産省によると、15年の時点で各国のキャッシュレス比率を比較した場合、韓国が89.1%、中国が60.0%、カナダが55.4%だったのに対し、日本は18.4%にとどまる。現金を好む国民性や、偽札の流通や盗難被害が少なく現金への信頼性が高いことや、ATM(現金自動預払機)の普及で現金が簡単に引き出せることなどが主な理由だ。
ただ、各国がキャッシュレス化を推進するのは利便性の問題だけではない。現金を取り扱うことで発生する経済的な損失も小さくなく、国内の現金の流通や管理にかかる費用が年約8兆円という試算もある。資金の流れが追いやすくなるため犯罪抑止や脱税防止に役立つことも期待されている。
そのため民間でも三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは、2次元バーコード「QRコード」の決済で、規格統一やシステム開発で協力する方向で議論を進めているほか、楽天や無料通信アプリのLINE(ライン)などIT大手もQRコード決済の普及に乗り出している。
ただ、キャッシュレス決済に詳しい野村資本市場研究所の淵田康之研究理事は「キャッシュレスを普及させるには統一的な仕組みが不可欠だ」と話す。さまざまなサービスが乱立する状況では、利用者の利便性は高まらないためで、「国などが主導することが必要だ」と指摘している。(蕎麦谷里志)
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