他人事でない「東芝ショック」 不適切会計が激増 グローバル化や連結・時価が落とし穴
不適切な会計・経理に手を染めた企業が激増している。2017年度は東証一部など上場企業で過去最多を記録。グローバル化や時価・連結など会計処理の高度化に体制が追い付かない背景もあり、信用失墜や最悪の場合は上場廃止に陥るリスクもある(東京商工リサーチ特別レポート)
◆株主や取引先を恐怖に陥れたスーパーの「ドミー」
東京商工リサーチでは、自社開示、金融庁、東京証券取引所などの公表資料を基に、上場企業、有価証券報告書提出企業を対象に「不適切な会計・経理(以下、不適切会計)」で過年度決算に影響が出た企業、今後影響が出る可能性を開示した企業を集計した。
2018年1月に不適切会計を開示した愛知県三河地域を地盤とする中堅食品スーパーのドミー(愛知県岡崎市、名証2部)は、3月27日付で上場廃止となった。
ドミーは2018年1月、店舗の固定資産の減損処理方法について、仕入先からのリベートや協賛金を不適切に傾斜配賦していた不正会計の疑いが発覚。第三者委員会による調査でも全容が判明しない中で、新たに減損懸念のある店舖で損益操作による不正なども判明し、2018年5月期第2四半期(2017年6~11月期)報告書が提出できなくなった。
根深い不正会計による突然の上場廃止で、ドミーの株主や取引先、社員などステークホルダーに動揺が走った。
◆東芝問題で開示企業が激増
2017年度に不適切会計を開示した上場企業は64社で、前年度の42社から22社と前年度比で5割超も増加した。
開示企業数が増加しているのは、2015年5月に発覚した東芝の不適切会計問題以降、開示資料の信頼性確保や企業のガバナンス強化の取り組みを求める声が浸透し始めたことが背景にあるとみられる。
内容別では、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が29社(構成比45.3%)で最多だった。次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」など営業ノルマの達成を推測させる「粉飾」が22社(同34.4%)と続く。
子会社・関係会社の役員や従業員による着服横領は13社(同20.3%)で、「会社資金の私的流用」、「商品の不正転売」など、個人の不祥事についても監査法人が厳格な監査を求めた結果が表れているようだ。
◆目立つ子会社による売上・利益のかさ上げ
発生当事者別では、最多は「子会社・関係会社」の30社(構成比46.8%)で、2016年度の17社から13社増加した。子会社による売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立つ。
「会社」は23社(同35.9%)だったが、会計処理手続きの誤りや事業部門で売上の前倒し計上などのケースがあった。「会社」と「子会社・関係会社」を合わせると53社で、社数全体の82.8%と多数を占めた。
市場別では、「東証1部」が34社(構成比53.1%)で最も多かった。「ジャスダック」が17社(同26.5%)、「東証2部」が7社(同10.9%)と続く。2013年までは新興市場が目立ったが、2014年から国内外に子会社や関連会社を多く展開する東証1部の増加が目立っている。
産業別では、「製造業」の27社(構成比42.1%)が最も多かった。製造業は、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多い。卸売業では、子会社が不明瞭な外部取引で売上架空計上や循環取引を行っていたケースなどが目立った。
◆海外展開で不適切会計に手を染める例も
上場企業は、国内市場の成熟化で各社とも海外への事業展開を強めている。拡大する営業網や人員増でグループ会社までガバナンスが浸透せず、不適切会計に手を染めたり追い込まれる企業が多いことを物語っている。
不適切会計が増えている背景の一つに、上場企業の増加もある。上場企業は2008年度から2017年度までの10年間で約1200社増えている。
さらに、経営側に時価会計や連結会計など厳格な会計知識が欠如し、現場でも知識不足で適切な対応をできず会計処理を誤る事例も散見される。
これは事業のグローバル化にガバナンスが機能せず、体制整備が追い付かない企業個々の問題ともいえるが、同時に急速な会計処理の高度化、専門知識を備えた現場の人手不足などもあるだろう。
こうした状況を解決しない限り、今後も不適切会計が減ることは考えにくい。
◆日本取引所Gは「トップ自ら範を示せ」
3月30日、日本取引所グループは「上場会社における不祥事予防のプリンシパル(原則)」を策定、公表した。
重大な不正・不適切な行為等の不祥事を予防するため、6つの原則を打ち出し、現場と経営陣の双方向コミュニケーションの充実によるコンプライアンス違反防止やグループ全体を貫く実効的な経営管理徹底などを経営トップに求め、不適切会計防止にはトップ自らが範を示すことが必要としている。
不適切会計が発覚すると、信用失墜に加え、過去に遡る決算訂正、第三者委員会の設置など業務への悪影響は計り知れない。また、株主や取引先の眼差しも厳しくなり、信頼を取り戻すには多くの時間が必要になる。
それだけに不適切会計を生み出さない体制の構築をどの企業も求められている。
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《東京商工リサーチ特別レポート》大手信用調査会社の東京商工リサーチが、「いますぐ役立つ最新ビジネス情報」として、注目の業界や企業をテーマに取材し独自の視点に立った分析をまとめた特別レポート。随時掲載します。
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