【スポーツi.】グローバル化で手法に限界か 五輪スポンサー、賛同全企業に「開放」を
□帝京大学准教授・川上祐司
過去最高のメダル数13個を獲得した平昌冬季オリンピック。開催中は隣国のプロパガンダに利用されたようなシーンが多く取り沙汰された。日本でも東京オリンピックを2年後に控えスポンサー企業のテレビ広告が流れ、商品プロモーションなどに利用されている感も否めない。
費用対効果に疑問
東京オリンピックの国内オフィシャルスポンサーは4月末で合計49社。内訳はゴールドパートナーが15社でオフィシャルパートナーは30社。今年募集したオフィシャルサポーターは4社で、今後も増えるだろう。理由はスポーツスポンサーシップの常識であった排他独占的権利の保障を打ち破る「1業種2社」という東京方式の導入である。
小職研究室では昨年11月よりスポンサー企業の認知およびテレビ広告動向調査を実施した。「1業種2社」制度でのスポンサー企業は8業種21社あった。契約の形態は、新聞社や金融機関などはそれぞれ「新聞」「銀行」といった主事業になっている。電機メーカーなどはTOPスポンサーの関係上、主事業ではなく、細分化された他の事業領域になっている。
スポンサー企業のテレビ広告は(1)オリンピックロゴ入り企業広告(2)オリンピックロゴ入り製品広告(3)東京2020オリンピック仕様の企業広告(4)東京2020オリンピック仕様の製品・ビジネス広告-など4つに分類される。
このうち(1)(2)で約67%を占める。既存広告にオリンピックロゴを貼付しただけの簡単な内容で、排他独占的権利を保障されたコンシューマー(消費財)企業が大半だ。一方、残りの33%は「1業種2社」のスポンサー企業が中心で、各社ともメリットを活用した(4)に特化した広告を制作せざるを得なくなる。
プロモーション効果を高めるには一定の広告投下が不可欠だが、特化したテレビ広告を流す場合、既存広告とは別に改めて制作する必要があり、さらなる費用負担が強いられる。費用対効果的に考えていささか不公平を感じざるを得ない。
調査ではゴールドパートナーの平均認知率は30.9%。オフィシャルパートナーが16.0%にとどまる。「知らなかった」との回答が90%超のスポンサー企業もあった。高額な協賛金とは裏腹に必ずしも効果的なプロモーションとは言い難い。
グローバル化で限界
実は1960年以降に開催されたオリンピックで開催費用が予算内に収まったケースはない。近年では2012年ロンドンオリンピックが当初38億ドルから180億ドルに急増。最終的には380億ドルになった。16年リオデジャネイロオリンピックは120億ドル。そして20年東京オリンピック。誘致当初予算の3412億円は7000億円に修正。4月には1兆8000億円に膨れ上がった。うち5000億円を組織委員会が負担するも残りは税金で補う。現在、スポンサー契約金を単純計算すれば既にこの金額は十分に集金可能であり、さらなる予算拡大修正も予想されよう。東京方式導入の背景を伺うことができる。
現在のオリンピックマーケティングの源となる1984年ロサンゼルスオリンピックは総経費5億ドル。税金を使わずして2.15億ドルの黒字となった。資金元のオフィシャルスポンサー35社とオフィシャルサプライヤー64社に加えて、65社にライセンスを与えライセンスのない関連商品の国内販売を禁止した。排他によるシンプルな価値交換プログラムで費用対効果を拡大させた。
しかし、ビジネスがグローバル化する昨今、現状のマーケティングプログラムでは限界に達したのでないか。世界展開する企業にとってはスポンサーとしての魅力が薄い。スポンサー企業を増やしたいのであれば、国内スポンサーはオリンピックに賛同する全ての企業に一律の権利を与えてはどうか。排他独占的権利はその営業活動で同権利をかたくなに堅守する広告代理店業界で十分ではないだろうか。
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【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭をとっている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。52歳。大阪府出身。
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