最高益のトヨタ、「サービス会社化」の成否は…

 
2018年3月期連結決算について、記者会見するトヨタ自動車の豊田章男社長=9日午後、東京都文京区

 平成30年3月期の連結最終利益が過去最高を更新したトヨタ自動車。異例の取引時間中の決算発表となった9日、東京株式市場で同社株は大幅高となり、その“強さ”を見せつけた。豊田章男社長は「トヨタ生産方式」で培ったノウハウをサービス関連事業でも生かす考えを示した。だが、先行きをみると、足元の販売競争を戦いつつ、新分野の開拓を進める必要があり、投資負担増が重くのしかかる。経営のかじ取りは難しさを増している。

 トヨタ株は9日、前日比3・8%高で取引を終えた。日経平均株価と足並みをそろえるように他の自動車大手8社はいずれも下落する中での独歩高だった。

 30年3月期の最高益だけでなく、減益予想となった31年3月期の内容も好感されたからだ。想定為替レートを前期より円高方向に見直したため、本業のもうけを示す連結営業利益は減益となる見込みだが、市場からは「4%の減益でとどまっており、内容はいい」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリスト)との声が上がった。為替の影響を除くと、1300億円の増益になる計算だ。

 中期的な課題は、「100年に1度」といわれる変革期への対応だ。豊田氏は9日、「私はトヨタを『自動車をつくる会社』から、移動に関わるサービスを提供する会社に変えることを決断した」と強調した。

 今年に入り、トヨタのサービス関連の動きは表面化している。1月には移動や宅配、ホテルなどさまざまなサービスに使える箱形の自動運転車両を米国で公表。サービス基盤の構築を目指し、米アマゾン・コムなどの有力企業5社と共同で2020年代前半に実証実験するとした。また、来年には東京都の販売会社4社を統合し、新会社を拠点にカーシェアリングに乗り出す。

 これまでの事業の延長線上にはない新分野では、トヨタが培ったノウハウを十分に生かすことは難しい。しかし、豊田氏は、「モビリティー(乗り物)サービスに関わる現場では、トヨタ生産方式に基づくオペレーションを導入する」と説明し、サービス事業でも効率化の徹底などでトヨタの強みを発揮し、他のサービスと差別化する考えを示した。

 ただ、自動運転やインターネットでつながる車(コネクテッドカー)を使ったサービスなどの次世代競争では、米アップルや米グーグルなどのハイテク世界大手が立ちはだかる可能性がある。豊田氏は「新たなライバルとなるテクノロジーカンパニーは、われわれの数倍のスピードで、豊富な資金を背景に新技術への積極的な投資を続けている」と危機感をあらわにした。

 トヨタが公表した31年3月期の研究開発費は1兆800億円。このうち35%を電動化や自動化などの次世代投資に振り向けるという。投資資金を継続的に捻出するためにも、“お家芸”である原価低減を地道に進める考えだ。決算の数字だけでは把握できない「生死を賭けた戦い」(豊田氏)はすでに水面下で始まっている。(高橋寛次)