【高論卓説】大学が消える時代 定員割れで補助金減額、弱肉強食の様相
文部科学省高等教育局は、大学に対して入学定員の厳守を徹底させている。私立大にも容赦なく、新設学部・学科などの改組・改革を定員オーバーであれば認めない。政府からの補助金もカットされるため、大学は入学者数に関して神経質になっている。
私が勤務する日体大では今年、保健医療学部が1人の定員割れを記録した。突然、入学辞退者が出たためである。受験者数が多くとも、補欠合格者を出すことができず、長年の経験からくる歩留まり率の魔術的な計算によって合格者を発表する。
数年前までは、日体大は1.3倍の入学者が認められていて、財政的にも余裕があった。現在では1.05倍、わずか数人のオーバーが、かろうじて認められるほど厳格である。入学辞退者が出れば、成績順で補欠を繰り上げ合格させるが、既に進学先が決まっていたりして定員数を確保するのに苦労する。
大ざっぱであった合格者数が厳密になったため、どの私大も大きな悩みの種を抱える。しかもレベルを維持せねばならず、担当者はAO入試、推薦入試の効用を説く。
私立大への経常費補助金の交付は、2017年度から唐突に定員割れの大学には大幅にカットされることとなった。4割の私立大が定員を充足できず、多くの大学がショックを受けた。特別補助金が、「圧縮率」によって左右され、6割も減額された大学も散見する。恐らく、資金繰りに困った大学もあったに違いない。地方の小規模私大が、おおむね定員未充足で、減額されたと考えてよいだろう。
もっとも、政府は地方大学・地域産業創生交付金(70億円)を創設し、自治体とタッグを組んで、「キラリと光る地方大学」にすれば多額の補助金を手中にできるようにもしている。要するに地域が一丸となって改革に取り組む優れた事業を行えば、大学や自治体に交付されるといい、予定件数は定められていない。
大学、地方自治体、産業界などがコンソーシアムを組織し、産学官連携によってリスクの高い先端研究などを行うとなれば、費用の約7割を国に負担してもらえる仕組みだ。だが、多くの地方大学に、かかる研究力・技術力があるのか疑問である。いよいよ研究機関として実力なき地方大学を退場させる装置が整った印象を受けようか。
先の「経済財政諮問会議」で麻生太郎財務相が、「定員割れや赤字経営となっている大学を公費で実質的に救済することがあってはいけない」と発言したように、もはや政府は護送船団方式で大学を救う考えはないようだ。文科省と財務省は、学生数と教職員数によって私学助成を行ってきたが、「定員充足率」と「教育・研究の質」へと軸足を移しつつある。
地方創生、人生100年時代構想において、私立大の役割と期待を主張しながら、少子化による自然淘汰(とうた)に加え、ハードルを高くして消失する大学を待っているかに映る。地方の小規模大は、遅かれ早かれ退場せねばならなくなる。かつての護送船団方式は消失したのだ。
定員充足率は、助成の最大の指標となり、人気なき大学、魅力なき大学は追い込まれていることに気付く必要がある。財務省が特別補助金をメリハリのある配分の必要性を主張し、特徴ある大学を応援する姿勢を明確にしていて、大学の減少に頓着していない。私学助成による大学間格差は広がる一方で、弱肉強食の様相が浮き彫りになってきた。地域社会の人口減少傾向に歯止めがかからず、過疎地が増加するにつれ、大学が消える時代に突入している。
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【プロフィル】松浪健四郎
まつなみ・けんしろう 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。博士。71歳。大阪府出身。
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