値下げ奏功、反転攻勢に挑む関電 コンビニ、電鉄…エリア内外で大口契約
平成28年4月の電力小売り全面自由化以降、顧客流出が続いていた関電が巻き返しを図っている。高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働後の昨年8月の値下げが浸透し、関西内外で大口契約を獲得。家庭向けでもガスとのセット販売で攻勢をかける。5月9日の大飯原発4号機(同県おおい町)の再稼働で、稼働原発は大手電力で最多の計4基となった。関電は7月にも再値下げをする方針だが、競争が激しさを増す中、どの程度大きな値下げ幅を実現できるのかが焦点になっている。(林佳代子)
新電力に「負けない」
「いよいよ本気を出してきた。ここまで安値攻勢を仕掛けられると、正直言って厳しい」
関西に本社を置く新規参入事業者(新電力)の幹部は、再び攻勢に転じた関電の勢いをこう評した。
関電は東日本大震災後の原発停止で平成25年と27年に2度にわたり料金を値上げし、自由化以降、顧客の13%超を大阪ガスなどの新電力に奪われた。しかし、昨年8月に家庭向けで平均3.15%を値下げすると、顧客の取り戻しを一気に加速させた。
原発の再稼働で供給できる安価な電力を武器に、企業などの大口契約でこれまでよりも安い料金を提示。今春には、新電力に奪われていた京阪電気鉄道の契約を1年ぶりに奪還した。
家庭向けでは今年4月から、ガスとのセット割引で新たに「なっトクパック」を展開。熾烈(しれつ)な競争を繰り広げている大ガスよりも割安な料金を設定した。
関電の岩根茂樹社長は4月の会見で、「なっトクパックは(大阪ガスに)負けない。関心を持っていただければ必ずご理解をいただける。広告をうまく使って訴求していく」と自信満々にアピールした。
入札でも優勢
関電が攻勢を仕掛けているのは足元の関西エリアにとどまらない。
昨年11月には中部電力と中国電力のエリアに進出。名古屋市と広島市、岡山市に営業拠点を設けた。中部電、中国電ともに原発再稼働の見通しが立たない中、公共施設への電力供給の入札に数多く参加。価格競争力を最大限に発揮し、日銀名古屋支店(名古屋市)や東広島法務総合庁舎(広島県東広島市)などの案件を落札した。
また、企業への営業活動にも力を入れ、コンビ二大手のセブン-イレブン・ジャパンの中部、中国、四国にある3千超の店舗の電力調達を地元大手電力などから奪い取った。
一方、最大市場の首都圏では4月、首都圏に約5万7千件の顧客を持つ長谷工コーポレーション子会社のマンション向け電力販売事業の買収を発表。首都圏の家庭向けの顧客数を今年度末の目標(10万件)を大幅に上回る約15万件まで伸ばすことになった。
値下げ幅が焦点
ただ、関電の経営環境は依然として厳しい。
29年度の販売電力量は前年度比5%減の1152億キロワット時で7年連続の減少。2年連続で中部電力の後塵を拝し、業界3位に甘んじている。値下げ効果によって販売電力量の落ち込みは縮小傾向にあるものの、完全に下げ止まったとはいえない状況だ。
7月にも実施する再値下げが今後の経営の行方を占うことになるが、大ガスが対抗値下げを示唆するなど新電力にも追随する動きがある。値下げ幅が小さければ新電力の反撃を許すことになり、逆に大きすぎれば経営を圧迫しかねないという難しさがある。
大飯3、4号機の出力は各118万キロワットと関電が再稼働を計画する原発7基の中で最大。収支改善効果は年間計約1200億円と高浜3、4号機の約1.4倍に上るため、より大きな値下げも期待される。「苦境を打ち破るには前回以上の値下げ幅を実現する必要がある」(関電幹部)との声がある中、関電がどの程度の値下げ幅で勝負に打って出るのか、注目が集まりそうだ。
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