動画配信にさまざまな動き ドワンゴが新サービス「バーチャルキャスト」の提供を開始

 
CGキャラクターになってVR空間でコミュニケーションを楽しめる「バーチャルキャスト」

 ユーチューバーをはじめネットで動画配信をする人たちが、子供たちのあこがれの存在になっている。自分を映さずCGなどのキャラクターを操作して、動画を配信するバーチャルユーチューバーと呼ばれる人たちも注目を集めている。そうした中、動画配信に関連した新しいサービスが生まれ、動画配信をテーマにしたアニメーションも登場して、ブームを一段と広げようとしている。

 ドワンゴ、バーチャルユーチューバーのサービス拡充

 ニコニコ動画やニコニコ生放送といった動画配信サービスで一時代を築いたドワンゴ(東京都中央区)が、バーチャルユーチューバーと一般に呼ばれる分野でサービスの拡充に乗り出した。3DCGで描かれたキャラクターを操作して、VR空間でコミュニケーションを楽しみ、配信もできるようにした「バーチャルキャスト」の提供を開始。また、東京・池袋にあるニコニコ本社のスタジオに、バーチャルキャラクターが人間のパーソナリティーとリアルタイムでやりとりできる設備も導入した。

 VRヘッドセットを装着し、手にコントローラーを持って見渡すとそこはVR空間。自分はCGのキャラクターとして存在し、目の前には別のCGキャラクターが立っている。ニコニコユーザーのみゅみゅが開発したVRライブシステムをもとに、ドワンゴがインフィニットループ(札幌市中央区)と共同で提供するVRライブ・コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」のサービス空間。離れた場所にいるユーザー同士が、3DアバターとなってVR世界でコミュニケーションを楽しめる。

 自分がCGキャラクターとなってVR空間にいる様を、そのままニコニコ生放送を通じて配信することも可能。アバターたちの周囲には、視聴者から寄せられたコメントが立体化されて飛び交っており、「バーチャルキャスト」のユーザーはそれを手でつまんで引き寄せたり、投げたりして楽しめる。

 ユーチューバーのように本当の自分をさらけ出したくない人でも、CGキャラクターを介してなら自分をアピールできることが、バーチャルユーチューバー人気の背景にある。「バーチャルキャスト」の導入によって、キズナアイやミライアカリといった人気バーチャルユーチューバーに続くスターが、ここから生まれてくる可能性もありそうだ。

 バーチャルキャストのプレーヤー、招いて番組

 ドワンゴでは、東京・池袋のP’PARCO内に置くニコニコ本社のニコぶくろスタジオに、バーチャルキャラクターを招きパーソナリティーとリアルタイムでやりとりできる設備を導入した。透明になった有機ELディスプレーにCGのバーチャルキャラクターを投影し、スタジオの奥にある専用ブースから人が操作する、というもの。操作ブースにいる人が頭や両手を動かすと、キャラクターの頭の向きや手の位置も変わる。表情はスイッチ操作で切り替えられる。

 放送局に人間のゲストと同じようにバーチャルキャラクターが遊びに来た状況を作り出し、そのまま放送・配信できる設備。有機ELディスプレーの背後にはカメラが置かれていて、操作ブースからパーソナリティーの顔がCGキャラクターの方を向いているかが分かる。そちらに首を振ってCGキャラクターの顔を向け、パーソナリティーも自分の方を向くことで、人間のゲストを相手にしている時のような自然な会話を演出できる。有名なバーチャルユーチューバーや、これから人気が出そうなバーチャルキャストのプレーヤーを招いた番組づくりを行い、世の中に広めていく拠点として利用されそうだ。

 動画配信について学べるアニメもスタート

 動画配信について学べるテレビアニメーションも、今年の春からスタートした。「プリティーリズム」「プリパラ」と続いたプリティーシリーズの新作「キラッとプリ☆チャン」は、動画配信を通して人気アイドルを目指す女の子たちが主人公。ユーチューブやniconicoといった動画配信サービスで人気者になりたいという、今どきの子供たちの夢を取り入れたストーリーになっている。

 「キラッとプリ☆チャン」の世界では、大企業や有名人がプリ☆チャンシステムを使って様々な番組を放送しており、誰でもスマホを使って見ることができる。女の子たちは、プリ☆チャンで自分だけのチャンネルをプロデュースして、大人気のプリ☆チャンアイドルになることを夢見ている。

 アニメでは、好奇心はあるものの引っ込み思案な桃山みらい、スポーツ万能で流行にも敏感な萌黄えもという2人の中学1年生が、なりゆきでプリ☆チャンアイドルを目指すことになり、同級生の青葉りんかがマネージャーとなって2人をサポートする。4月8日からスタートしたアニメでは、みらいとえもが街中にある花屋の前で収録をしようとする際に、映り込む店舗の許可を得ようといった注意が入り、番組を作る前にはシナリオをしっかり錬ろうといったアドバイスも行われる。

 動画配信がブームになるにつれて、迷惑行為をわざと行ってアクセス数を稼ぐような動画が出てきて、まねをする子供たちもいるのではといった不安が出ている。アニメを見て自分たちも動画配信をやってみようと思う子供たちが、常識を知らず迷惑行為をしてしまわないよう、「キラッとプリ☆チャン」ではさまざまな配慮が行われているようだ。