レコード生産、16年ぶり100万枚超え アナログの音色で業界活況

 
原盤に溝を彫る工程を説明する職員=4月、横浜市鶴見区

 CDの普及で一時は衰退したレコードの人気が本格的に回復している。昨年の生産量は16年ぶりに100万枚を突破、生産額もこの7年で10倍以上となり、関連業界も盛り上がる。インターネット配信など音楽を楽しむスタイルが多様化する中、アナログの温かな音色が人々を引きつける。

 ベテラン職人笑み

 4月下旬、横浜市鶴見区の東洋化成のレコード製造工場。静まりかえった構内で、1970年代から受け継がれる機械が黒い原盤に溝を彫る。別の区画では、ずらりと並ぶ緑色のプレス機が次々にレコード盤を作り出し、職人が丹念に検査していた。

 「本当に忙しいが、レコード好きの一人としてうれしい」。この道30年以上のベテラン職人、粟野張男さん(66)は満面の笑みを浮かべる。

 レコード製造は(1)「ラッカー盤」という原盤に溝を刻む(2)ラッカー盤を基に、ニッケルで「スタンパー」と呼ばれる型を作る(3)スタンパーで塩化ビニールをプレス-の3つの工程がある。

 東洋化成は全工程を自社で行う世界でも珍しい企業だ。90年代には事業廃止論もあったが、レコード人気の再燃とともに、ここ5年間は生産量が増え、人員は2倍以上に。中止されていた新規採用も再開され、粟野さんは「若い人に技術を教えていける」と後進育成にも力を入れる。

 日本レコード協会によると、ピークの76年には約2億枚が生産されたが、82年に発売されたCDが手軽さや持ち運びやすさから広がると、主流の座を奪われ、2009年には約10万枚にまで落ち込んだ。

 だが、近年はネット配信などでCDの生産量が減少する一方、レコードは増加傾向で、昨年は約106万3000枚と、01年以来の100万枚超えに。生産額も約19億2000万円と、最低だった10年の10倍以上にふくらんだ。

 「アナログな音やジャケットのデザイン性を新鮮に感じる若者に支持が広がっている」と協会の担当者。「アイドルやJポップ歌手がレコードを出し始めたことも要因の一つ」と分析する。

 プレーヤー復活

 この流れに関連業界も攻勢をかける。ソニーミュージックグループは今年、約30年ぶりに東京都と静岡県の拠点でレコードの自社生産を再開。パナソニックも16年、生産中止となっていた音響機器ブランド「テクニクス」のレコードプレーヤーを復活させた。宇都宮市の工場で生産し、売れ行きは好調だという。

 東洋化成も毎年4月、世界各地で開催されるイベント「レコード・ストア・デイ」を日本で運営し、盛り上げに一役買っている。レコード営業課長の小林美憲さん(35)は「聴く人が増えると、レコードを出したいというアーティストも増える。選択肢がたくさんあることで、表現の幅も広がる」と力を込めた。