東京海上日動、物流業者の貨物事故時AIで保険金請求作業早く

 
物流業界では人手不足が深刻さを増している

 東京海上日動火災保険が、貨物事故が起きた際に物流業者が保険金を請求する作業について、人工知能(AI)を活用して迅速化するシステムの運用を月内に始めることが7日、分かった。1時間程度かかっていた作業を数分で完了できるようになる。深刻な人手不足にあえぐ物流業者を支援し、保険販売の拡大につなげたい考えだ。

 システムは、日立製作所グループの日立ソリューションズ・クリエイト(東京都品川区)と共同開発した。東京海上日動の運送保険の契約者向けに提供する。

 運送中や倉庫内で発生した貨物事故で保険金を請求する際は、貨物の損害状況を写真撮影し、運送記録などの貨物情報と確認し、損害報告書として保険会社に提出する必要がある。しかし、多くの貨物を取り扱う事業者ほど確認作業が煩雑で時間がかかり、負担となっている。

 システムには貨物情報や保険金請求に必要な書類の情報が取り込まれており、スマートフォンなどで撮影した写真を読み取れば、AIが分析して瞬時に写真と貨物情報をひも付けることができる。AIが損害レベルの自動判定も行う。物流業者は作業負担の軽減や保険金の早期受け取りが可能になる。

 インターネット取引の拡大に伴う宅配便の取扱件数の増加や人口減少などに伴い、物流業界の人手不足は深刻さを増す。帝国データバンクによると、人手不足による倒産は「道路貨物運送」業種で2017年度に10件と前年度の2倍に急増し、過去5年の累計でも業種別で最多になった。

 物流業者は人手不足で忙しくなるほど事故も増え、悪循環に陥る傾向にある。東京海上日動は物流業者の経営安定を支援する体制整備が保険契約の拡大にもつながるとみている。