「財布じゃなくスマホ」の時代へ インスタ、スナップチャット…SNSが直接決済サービス参入
写真共有ソーシャルサービスとして人気のあるインスタグラム(フェイスブック傘下)が、アプリから直接サービスの予約やチケットの購入が可能な決済システムを5月からスタートさせた。現時点で対応しているのは一部の提携サービスのみと非常に限定的ではあるものの、たとえば美容院やレストランの予約、支払いが、インスタグラムのアプリ内ですべて完了するようになっている。
決済機能を利用するには、オプションの「支払い設定」で、クレジットカードやデビットカードを登録、PIN番号を設定するだけだ。
消費者と企業を直接“つなぐ”
インスタグラムは、しばらく前から「インスタグラムダイレクト」という形で、消費者とビジネスをつなぐことに力を入れている。同社によれば、インスタグラムダイレクトで企業や店などとビジネス上のやり取りする人は、毎月1億5千万人以上に上るという。
そのきっかけとなっているのが、ユーザーの「フィード」と「ストーリーズ」に表示される広告だ。簡単に説明すると、インスタグラムのアプリの左下コーナーに表示される「家」の形のアイコンをタップすると、自分がフォローしているユーザーの投稿写真や動画が表示される。これがフィードだ。
ストーリーズは、通常のフィードの上に別枠で表示され、複数の写真や動画をスライドショー形式で共有できる機能である。最大の特徴は投稿後24時間で自動消滅する点だ。
インスタグラムによると、これらフィードやストーリーズから、企業に直接メッセージを送信(これがインスタグラムダイレクト機能だ)するユーザーが増えているという。
こうした背景を踏まえれば、インスタグラムが、ユーザーがビジネス上のコミュニケーションを取るだけでなく、アプリ内から直接商品やサービスを購入できるようにしようと考えるのも、自然な流れといえる。
現時点ではアメリカ国内のみの展開であり、利用可能なサービスも、レストラン予約のレシー、オープンテーブル、エルプ・リザベーション、チケット購入のファンダンゴなど、20弱に止まっているが、徐々に提携サービスを拡大していくとしている。
また複数のメディアが指摘しているように、今後は写真共有というインスタグラムの特徴を活かし、スポンサーが掲載する商品をクリックすれば、アプリ内で支払いまでのすべてのプロセスが完了する仕組みが提供されるかもしれない。
スナップチャットは「実験」
そして同じく写真共有アプリであり、24時間で自動消滅する写真の先駆者であるスナップチャットは先ごろ、アプリ内に「スナップストア」をアメリカ国内限定、かつ期間限定でオープン。スナップチャット独自の商品、たとえばTシャツやぬいぐるみなどのノベルティを販売していた。
スナップストアはあくまでも実験的な試みであり、期間も短かった(現時点では「新製品が近く追加予定」との表示になっている)。しかしスナップが同店舗を立ち上げたのは、商品を売るためでなく、アプリ内での直接決済を試すのが狙いだったと見られている。
モバイルアプリでの決済、アメリカではスタバが勝者
前述の2サービスとは少し形が違うが、モバイルアプリでの決済といえば、アメリカではスターバックスが圧倒的な勝者となっている。調査会社イーマケターは、アメリカ在住の14歳以上で、過去半年の間に最低1度は店頭でモバイル決済を利用した人のうち、2018年末までにスターバックスのモバイルアプリで支払いをする人は2340万人に達すると見積もっている。
これに対し、アップルの決済システムであるアップルペイは2200万人、グーグルペイは1110万人、サムスンペイは990万人と予想されている。
店頭やオンラインでの買い物を、現金やクレジットカードを財布から出すのではなく、すべてスマートフォンひとつで済ませられる時代がすぐそこまで来ている。
(岡真由美/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
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