民泊届け出伸び悩み、簡宿増加 新法施行も営業規制や自治体条例が「壁」

 
民泊を開業する際には、玄関などに「届出済」の表札を掲げなければならない=13日(写真は一部加工しています)

 住宅に有料で宿泊させる住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行に伴い、全国で解禁となった民泊サービス。家主からの届け出が伸び悩む一方、増えているのが旅館業法に基づく「簡易宿所」(簡宿)だ。民泊に課せられた180日の営業上限規制がなく、投資回収が早く進むのが人気の要因だ。

 「日本らしさ」を求める訪日外国人旅行客でにぎわう東京・浅草。民家や飲食店が混在する商業地の一角、自宅を改装して民泊許可を取った男性(62)は「(営業日数上限の)180日の枠がほぼ埋まった」と打ち明ける。商社勤務時代の海外経験を生かそうと、民泊経営を決めた。自宅に加え、徒歩数分の雑居ビルを取得したが、「新法では投資回収に時間がかかる」という理由で、簡易宿所として営業を決めた。

 この男性は今年1月、簡宿営業のために消防関連や水回り設備の改修に500万円を追加投資して、最大5人が泊まれる1棟貸し簡宿を開業した。1泊1万5000円で2泊以上の宿泊が条件で、年内の稼働率は8割超と好調だ。男性は「民泊、簡宿、どちらの手続きも素人には大変。ただ、営業開始後は定期報告義務も日数制限もない分だけ簡宿の方がいい」と話した。

 台東保健所によると、2013~15年度に年間1桁で推移した簡宿の新規許可は16年度19件、17年度27件と増え続け、今年3月末現在の簡宿は206施設。担当者は「連日、相談対応で混み合っている」と話す。

 さらに、国が16年4月に簡宿営業許可の要件を緩和したこともあり、16年度の全国の新規許可件数は前年度比2.91倍の2390件に達した。

 早くも課題浮き彫り

 民泊参入を阻害している要因の一つに、自治体独自の条例がある。条例で民泊新法の規定に上乗せし、営業区域や期間の規制を追加。事実上の規制強化と受け止めて、届け出を断念した家主も多い。

 古民家や町屋、別荘の個人所有者から民泊運営の相談に応じている、宿泊予約サイト運営会社の担当者は「3月の民泊新法の届け出手続き開始後も、民泊より簡宿を選んでいる人が多い」と話しており、鳴り物入りで導入された民泊新法の課題が浮き彫りになった。(日野稚子)

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 ■住宅宿泊事業法(民泊新法)と旅館業法の施設の違い

 ≪民泊新法の民泊≫

 ・営業に伴う許可    自治体への届け出

 ・営業日数の制限    年間で180日以内

 ・消防用設備      原則必要(延べ床面積などで不要)

 ・住宅専用地域での営業 可能(自治体により異なる)

 ≪簡易宿所、旅館・ホテル≫

 ・営業に伴う許可    自治体の営業許可

 ・営業日数の制限    なし

 ・消防用設備      必要

 ・住宅専用地域での営業 原則不可