【スポーツbiz】東京の魅力を伝えるマラソンコース
東京の魅力を、改めて世界に伝える。5月31日に発表された2020年東京オリンピックの男女マラソンコースは、情報発信が思い切り意識された。
19年末に完成する新国立競技場から進路を東に、東京ドーム、日本橋を通って浅草に向かう。雷門から南へ銀座、新橋を抜けて東京タワーで折り返す。来た道を北上し、神保町の古書店街を抜けて皇居外苑へ。二重橋前で折り返すと、新国立競技場のゴール目指してまっしぐらだ。確かに42.195キロは東京の魅力であふれる。
視聴者総数「36億人」
国際オリンピック委員会(IOC)は、世界におけるオリンピック中継のテレビ視聴者総数を「36億人」と弾く。
地球上の人口の約半数が見ている。マラソン中継のテレビに映る光景に、「東京に行ってみたい」「東京の街並みを歩きたい」と思う人は決して少なくないだろう。
1992年バルセロナ、2000年シドニーでは狙いが成功した。ともに観光都市。何を今更と思ったものの、テレビで街並みが紹介されて、都市の魅力はさらに増したという。
先々週の小欄でも取り上げた通り、政府は外国人旅行者数を20年に4000万人、30年には6000万人ともくろむ。マラソン中継での情報発信はまたとない機会である。
近年の12年ロンドン、16年リオデジャネイロ大会は、運営、警備への配慮から周回コースで実施された。
東京のコースは、毎年3万5000人以上のランナーが走る東京マラソンと重なる部分が少なくない。培ったノウハウの生かしどころだ。
だからこそ国際陸上連盟(IAAF)が「東京を象徴する場所をコースに反映させよ」と繰り返し要請した。「マラソンが開催都市に与えた好影響」という実績を誇りたいのである。
みずほ総合研究所は、17年東京マラソンの経済波及効果を東京都は約166億円、日本国内に広げると約284億円と試算する。20年東京大会のマラソンはどれほどの波及効果をもたらすだろう。
前回、1964年東京大会のマラソンでは国立競技場から西へ、ひたすら甲州街道を走り、調布の武蔵野の森、味の素スタジアム付近を折り返した。あのころ、東京の街は西に西に延びていた。やがて東京都庁が有楽町から新宿に移り、副都心開発など、都の西側に比重が移るきっかけとなった。
成熟した現在の東京は住宅地として発展した西部地域を背景に、東の臨海部に軸足を移しつつある。マラソンコースは東西の中間、歴史と伝統の街並みを走る。どんな化学反応を起こすか、これも期待の一つだ。
蒸し暑さ対策万全に
課題は暑さ。“亜熱帯”化が進む真夏の東京で炎天下のレースはランナーだけではなく、沿道の観衆にも影響はでよう。特に日本特有の蒸し暑さに不慣れな外国人観光客への対応は万全を期したい。
東京都は都道136キロにわたって、路面の温度上昇を抑える舗装計画を進めている。強い日差しを遮る街路樹の育成は、3年越しの事業だ。
災害情報の発信はもとより、外国人旅行客が利用できる医療機関の情報なども分かりやすく発信したい。
東京は安心、安全な街。東京の魅力とともに、そうした情報も世界に向けて発信していければ…と思う。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)
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