【eco最前線を聞く】エネ業界全体で新イノベーションを

 

 □エネチェンジ・城口洋平会長CEO

 電気料金の比較サイトの運営などを手掛けるENECHANGE(エネチェンジ、東京都千代田区)は、住友商事グループと共催で海外のエネルギー関連のベンチャーを対象としたアクセラレーター(事業支援)プログラム「ジャパンエナジーチャレンジ2018」を始めた。応募があった60社の中から起業家の選考を行う。城口洋平会長CEO(最高経営責任者)に今回のプログラム開催の狙いを聞いた。

 応募を海外企業に限定

 --今回のプログラムを企画した目的は

 「世界的に3つのD(デジタル化、分散化=ディセントラリゼーション、脱炭素化=ディカーボニゼーション)が広がっており、日本でも2020年には発送電の分離も予定されるなどエネルギー業界を取り巻く環境が大きく様変わりしようとしている。こうした中、エネルギー業界全体で新たなイノベーションを起こせないかと考えて実行に移した」

 --日本の会社が企画したプログラムだが、応募を外国企業に限定した理由は

 「特に欧州では電力自由化に関する制度設計が日本よりも先行している。結果として多種多様な新しい技術やビジネスが花開いており、それらを日本のエネルギー業界に導入することによって、海外ベンチャーにとっては日本での事業拡大、また日本の電力会社にとっても新規事業の創出を後押しできると考えたからだ」

 --どういった内容のプランが多かったか

 「需給逼迫(ひっぱく)時に電力料金を高めに設定したり、節電したらその分だけの対価が得られるような『デマンドレスポンス(需要応答)』を後押しするような技術や、スマートメーターなどを活用して電力の使用状況を逐次監視するというソリューション(課題解決策)が目立った」

 東京ガスなどメンターに

 --選考はどのように進められているのか

 「プログラムを共催する住友商事の子会社で電力小売りのサミットエナジー(東京都千代田区)のほか、世話役(メンター)として、石油元売り大手のJXTGエネルギー、東京ガス、新電力のLooop(ループ、同文京区)、太陽光発電を手掛けるネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)にお願いしている」

 「選考は既に書類審査などを通じて10社に絞り込んだ。7月4~6日に英国で第1回の成果発表会(デモデイ)を実施し、そのなかで実現性の高い2社を選んで、9月に東京で開く本戦に出場してもらう」

 --選考された企業と日本企業との連携の可能性は

 「もちろん優れた技術やサービス、アイデアがあると判断されれば、業務提携に踏み切る可能性もある。仮に東京のデモデイへの参加企業でなくても、メンターが『これは有望だ』と判断したものであれば、さまざまなかたちでの提携もあり得る」

 --ベンチャーの事業を早期に加速させていくには一定の資金も必要だ

 「戦略的な事業展開を進める上で、他社に後れを取らないよう、大型の資金調達に向けた検討を始めている。エネチェンジが直接、ベンチャーに投資するだけでなく、既存のベンチャーファンドを通じて投資する方法もある。いずれにせよ、事業の内容やタイミングなどを踏まえて最善の判断をしたいと思っている」(松村信仁)

                   ◇

【プロフィル】城口洋平

 きぐち・ようへい 英ケンブリッジ大工学部博士課程修了。2013年ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボを設立。15年に同社からスピンアウトするかたちで、ENECHANGEを設立。17年にスマップ・エナジーと経営統合し、エネチェンジの会長CEOに就く。30歳。兵庫県出身。