【和歌山発 輝く】玉林園 老舗茶屋発のユニーク商品 今や「県民の味」に

 
自慢の緑茶や抹茶などが購入できる玉林園の売店=和歌山市

 江戸時代から続く老舗茶屋だが、主力商品はソフトクリームにラーメン。一風変わった企業が和歌山市の紀の川沿いにある-。1854(安政元)年創業の緑茶製造・卸・販売業「玉林園」は、抹茶入りのソフトクリーム「グリーンソフト」や、天かす入りのあっさりとしたラーメン「てんかけラーメン」など和歌山県を代表するユニークな商品を世に送り出してきた。

 この2商品は、各都道府県の習慣や文化を紹介する人気テレビ番組にも取り上げられ、今では「県民の味」に。茶屋としては異色の商品を、全国に浸透させた背景には、既成概念にとらわれない先代社長のユニークな発想と、それを支える社長の堅実な経営戦略があった。

 “世界初”抹茶ソフト

 創業当時はたばこや茶の製造販売、塩干類の販売を手がけていたが、明治時代にたばこの製造販売が国の事業になったことなどを受け、1913(大正2)年からは茶を専業とし、市民の人気を集めた。

 ところが避けて通れない悩みがあった。夏場の緑茶需要の低下だ。夏の暑い時期に急須と茶葉を使って熱い茶を飲む人は一段と少なくなる。そこで林巳三彦・前社長は、当時はまだ珍しかったソフトクリームに目を付けた。冷たいソフトに抹茶を使う。

 1958(昭和33)年、その発想から“世界初”の抹茶入りソフト「グリーンソフト」が生み出された。60年にはそんなグリーンソフトに加え、明石焼きや中華そばを気軽に味わえる飲食店を事業化して、「グリーンコーナー」の1号店を創業した。

 さらに、数多くラーメン店が並ぶ和歌山で「1人でラーメンを食べに行きたい」という女性客や従業員の声を受け、自身もラーメン好きだったことから、新しいラーメンの開発にも取りかかった。試行錯誤を経た上で完成したのが、鶏ガラや豚骨などがベースのあっさりとした味わいで、スープのうま味を吸った山盛りの天かすが魅力の「てんかけラーメン」だ。豚骨しょうゆの「和歌山ラーメン」とは異なる味わいは、瞬く間に人気を集め、グリーンソフトと並ぶグリーンコーナーの人気商品に成長した。

 事業を手堅く拡大

 前社長が考案した商品は、玉林園の名前を全国に浸透させるきっかけとなった。

 しかし、会社を継続させるにはユニークな発想だけでは成り立たない。林和宏社長は「ヒット商品を開発したからといって安泰ではない。さらに枝葉を広げなくてはならない」と話す。

 実は、グリーンコーナーの売り上げは全体の10%程度で、大半は大手レストランやスーパーなどでのデザート製造事業という。社長就任以降、さまざまな事業を手堅く拡大し、当初自社だけで販売していたグリーンソフトの販路も次第に広がり、今ではコンビニにも並ぶ。グリーンソフトの開発で培ったデザート作りの技術を磨き、抹茶を使ったデザートの製造・販売からチョコレートやパッションフルーツなどを使ったデザートも手がける。

 和宏社長は「何でもチャレンジする精神は必要だ」としながら、「企業である以上、採算が取れないといけない」と話す。グリーンソフトに、てんかけラーメンと、花形商品の存在にあぐらをかかず、事業拡大のため他の道も常に模索し続けている。就任以降、売り上げは5倍以上になったというが、和宏社長は「この10年ほどで玉林園は大きく変わったが、これからも変わる。その時々の世代に合うものを作っていきたい」と思いを巡らせている。(小笠原僚也)

【会社概要】玉林園

 ▽本社=和歌山市出島48-1 ((電)073・473・0456)

 ▽創業=1854(安政元)年

 ▽資本金=2400万円

 ▽従業員=約140人

 ▽売上高=20億8000万円(2018年4月期)

 ▽事業内容=緑茶製造、卸、販売事業など

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 □林和宏社長

 ■歴史にあぐらをかかず変わり続ける

 --経営理念は

 「お客さまにとって『ロープライス、ハイバリュー』であること。口で言うのは簡単だが実際に行うのはとても難しい。コストを落とすと必ず味が落ちるからだ。何度も試作、試食を繰り返して研究し続けないといけない。顧客からはさまざまな要望が上げられるが、絶対に実現できるように、ありがたく食らいついていかないといけない」

 --ヒット商品を作ってきた先代社長はどんな人だったのか

 「ひらめきが良くて素晴らしい才能があった。ただ、その分大ざっぱなところがあり、計画を練るよりも先にアイデアを実現しようとするタイプだった。一度思いついたらすぐ行動に移すので、結果的に不必要な機材を購入してしまうこともあり、経営上の苦労もあった。それでも今日の玉林園があるのは先代の功績によるところが大きい」

 --ヒット商品に頼らず手堅く事業を拡大してきた信条は

 「これまでの歴史にただ乗っかっているだけでは仕事はできないと思っている。過去ではなく、現実を見て生きないといけない。茶屋としては確かに老舗だが、そこには特に意味がなく、茶だけにこだわっているようではだめ。これからも変わっていかないといけない」

 --目標は

 「『多少高くても玉林園に頼もう』と言ってもらえる会社。商品の値段を上げるというような意味ではなく、『玉林園なら安心だから任せよう』と思ってもらえる会社になりたい」

 --そのために必要なことは

 「まずは徹底した品質管理。そして製造に携わる人が共通して品質への高い意識を持つこと。現場で仕事をするのは従業員のみなさん。『社長が言ってるから』ではなく、各自が自主的に自分と同じレベルで品質について考えてほしい。テレビに取り上げられるなどしているが、個人的には、まだまだ努力が足りないと思っている。やること、やれることは山積だ」

【プロフィル】林和宏

 はやし・かずひろ 日大理工卒。和歌山市内の建設会社勤務を経て、1978年、玉林園へ入社。2002年から社長。71歳。和歌山県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■こどもの日に市内幼稚園児へ無償提供

 さっぱりとした甘さに抹茶の風味がやみつきになる。バニラのソフトクリームすら珍しかった1958(昭和33)年、天然の抹茶を100%使用し、「世界初の抹茶入りソフトクリーム」として売り出された。今では和歌山と言えばこの名が上がるほどの「県民の味」だ。

 75年以降は、毎年こどもの日には欠かさず和歌山市内の幼稚園児たちに無償でグリーンソフトを提供してきた。幼い頃から味を覚えてもらう地道な“戦略”も根強い人気に一役買っている。今年は和歌山城天守閣の再建と同じく60周年を迎え、コンビニなどで販売されているパッケージには和歌山城が添えられ、華やかな見た目に。

 1個180円。グリーンコーナーや一部コンビニ、同社オンラインショップなどで販売。問い合わせは同社((電)073・473・0456)まで。