スポーツ放送権争奪戦 IT大手、生配信参入相次ぐ
サッカーや野球などの試合を放送する権利の獲得競争が激しくなっている。国内外のIT大手が集客策の目玉として自社サイトで生配信に乗り出したのが要因。スマートフォンの普及で日常的にスポーツ動画を楽しむ人は増えている。日本勢が活躍したサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の終了後、「スポーツ放送権」をめぐる争いは一段と過熱しそうだ。
6月の週末、東京都内に住む30代男性はカフェに入るとスマホを取り出し、SNS(会員制交流サイト)「フェイスブック」を開いた。目的はサッカーJリーグの観戦。「W杯の影響ですっかりサッカーにハマった」と語る。
フェイスブックはJリーグの生配信を8月上旬までの期間限定で開始した。利用者は各チームのページなどで無料視聴できる。同社は米大リーグ(MLB)などの生配信を海外で手掛けており、国内での事業展開の布石とみる向きもある。
海外では、米ツイッターが米メジャーリーグサッカー(MLS)と契約を結び、試合の生配信を開始した。米グーグル傘下のユーチューブは人気の野球専門番組を配信。米アマゾン・コムは、サッカーのイングランド・プレミアリーグの放送権を取得した。
スポーツの生配信には利用者をつなぎとめる狙いがあるとみられる。フェイスブックは、スポーツ配信に「利用者同士の交流が深まる効果がある」(同社)と判断。動画・写真共有中心の「スナップチャット」などへの利用者の流出に歯止めをかけたい考えだ。
スマホの普及や通信環境の改善もIT各社の戦略を後押しする。スポーツは生で観戦したいと考える人が多く、外出先から視聴できるネット配信との相性が良いという。
日本では、楽天が昨秋から米プロバスケットボール(NBA)の配信を始めた。スポーツコンテンツは「映画やドラマの制作に比べて、失敗のリスクが低く比較的手が出しやすい」(同社)。
楽天は今後、スポーツの生配信を一段と充実させる方針だが、「放送権料が急ピッチで上昇している」(業界関係者)。英動画配信大手のパフォーム・グループが獲得したJリーグの放送権料は総額2000億円超と従来の約7倍に達した。
デロイトトーマツグループでスポーツビジネスの支援を手掛ける里崎慎氏は「テレビ離れが進む中、放送局にとっても(高視聴率が取れる)スポーツ中継の重要性は一段と高まっている」と指摘している。
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