出光・昭和シェル統合、村上氏まとめ役 「名を捨て実を取る」戦略で最大手追撃へ

 
握手を交わす(左から)昭和シェル石油の亀岡剛社長と出光興産の月岡隆会長=10日、東京都千代田区

 約2年にわたる出光興産と出光創業家の対立が解消に向かい、出光と昭和シェルは来春の経営統合にめどをつけた。膠着(こうちゃく)状態を打開した水面下では、投資家で「物言う株主」として知られる村上世彰氏が動いた。統合実現がもたついた中、ガソリンなどの燃料油で国内販売シェア50%を握る最大手のJXTGホールディングス(HD)を追撃できるか、手腕が問われる。

 際どい共通解探し

 両社は株式交換により、出光が昭シェルの全株式を取得して完全子会社化する道を選んだ。形式上は出光が昭シェルを傘下に収めるが、10日に記者会見した出光の月岡隆会長は「実質が大事だ。形式にとらわれることなく新会社がスタートしていける」と強調。昭シェルの亀岡剛社長も「目的は統合ではなく強い会社を作ることだ」と応じた。

 代表権を持つ取締役も出光と昭シェルから2人ずつ出す。亀岡氏は「両社から取締役や部室長などをフェアな形で出す」と述べた。

 一時は没交渉となっていた出光と創業家の協議は今年4月に再開。この数カ月は出光と創業家、昭シェルの三者が折り合える際どい「共通解」探しだった。月岡氏は「統合に向けてさまざまな選択肢がある中で、三者が合意できることを模索して、最善の形が株式交換だった」と強調する。

 まとめ役は村上氏

 「村上氏が創業家の相談相手になり、公正な立場から統合の必要性について助言したことが当社と創業家の関係改善につながったのは事実。村上氏が無私の立場から尽力したことに感謝している」。月岡氏は会見で異例の賛辞を述べた。

 村上氏は出光株を1%弱保有。創業家と親しい財界人からの依頼を受け、創業家と面談するようになったとされ、出光と昭シェルの統合を支持する立場だ。ただ、創業家で統合賛同に転じたのは、資産管理会社の日章興産と、出光昭介名誉会長の長男で同社社長の正和氏で、両者の出光株の保有割合は約14%と、創業家全体の保有割合(約28%)の半分程度だ。日章興産の代理人は「創業家側の株主の全員が会社提案を受け入れたわけではない」としている。昭介氏と昭介氏の次男である正道氏はなお反対とみられ、火種が完全に消えたわけではない。

 国内で出光は北海道、千葉、愛知の3カ所、昭シェルはグループ会社で4カ所の製油所を持っている。

 亀岡氏は「両社の製油所網はアジアの中でもトップクラスの競争力を持つ」とした上で、製油所の統廃合の可能性については「安定供給という使命からいっても、現在のところ全く考えていない」と否定した。

 出光と昭シェルは統合により「短期的に500億円以上のシナジー創出」(月岡氏)を目指す。一方、旧JXHDと旧東燃ゼネラル石油が昨年4月に統合して誕生したJXTGHDは2018年度は650億円、19年度は1000億円のシナジー実現を掲げて先行している。(森田晶宏)