【スポーツbiz】存在感を増す「eスポーツ」 ゲーム大国日本は出遅れ
スポーツとは何か? そう問われたとき、あなたなら何と答えるだろう。
多くの人は、「身体を使った活動」と思われるに違いない。手元にある辞書を引いてみても「余暇活動・競技・体力づくりとして行う身体運動。陸上競技・水泳・各種球技・スキー・スケート・登山などの総称」(大辞林第三版)とある。
では、最近ちょくちょく名前を聞く「eスポーツ」とは何だろう。私たちが通常考える「スポーツ」と同じなのか。
普通とは異なる概念
正式には「エレクトロニック・スポーツ」と呼ばれ、簡単に言えば、コンピューターなど電子機器を使って行う競技、スポーツ全般を指す。選手は肉体を使って活動するわけではなく、電子機器の前に座り、仮想空間で競技をする。
“テレビ”ゲームである。普通に考えるスポーツの概念とは明らかに異なっていよう。
一方で、スポーツには「気分転換」あるいは「余暇の活用」という意味もある。
スポーツ関連の本によれば、スポーツ(sports)の語源はラテン語の「deportare」であり、「運び去る」とか「運搬する、輸送する、追放する」などの意味があったとされる。そして、別の場所に移す、運ぶ、転換するという本来的な意味から変化、フランス語でいう「気分を転じる、楽しませる、遊ぶ」という意味の「deporter」「desporter」となり、16世紀、英語の「sporte」「sport」にたどりつく。(以上は、笹川スポーツ財団HP「スポーツ歴史の検証」より)
ならば、スポーツと名乗っても不思議はない。
長々と書いてきたのは、64歳になる私の頭を整理しておきたかったからだ。これまでのスポーツへの意識を外さないと、「eスポーツ」は語れないと考えたからである。
動きだしたIOC
この「eスポーツ」が、8月18日にインドネシアのジャカルタで開幕するアジア競技大会の公開競技となった。日本からも予選を勝ち抜いた選手たちが出場する予定だ。
ただし、選手を派遣する日本オリンピック委員会(JOC)は「正式な日本代表ではない」との姿勢をとる。
今年2月、国内統括団体、日本eスポーツ連合(JeSU)が誕生したが、JOCの加盟団体にはなっていない。JOCが選手派遣に必要な手続きは代行しても、派遣はあくまでもJeSUである。従って、選手たちには日本選手団公式ユニホームや滞在費などの支給はなく、開閉会式にも参加できない。
統括団体が未加盟である以上は致し方ないが、スポーツ界にはまだ、「テレビゲームはスポーツなのか」とのためらいものぞく。しかし、周辺の空気はずいぶん変わってきている。
2022年に中国の杭州で開くアジア競技大会では公式競技となる。遅ればせながら、日本でも来年の茨城国体では文化プログラムとして競技会が開かれる予定だ。そして何より、国際オリンピック委員会(IOC)の動きが目立ってきた。
IOCは昨年、「eスポーツはスポーツ活動として考えられる」との見解を発表、オリンピック実施競技としての採用を検討し始めた。この7月21日には、本部のあるスイス・ローザンヌで「eスポーツとオリンピック運動の今後」をテーマとしたフォーラムを開く。
各国際競技連盟や各国・地域オリンピック委員会の代表者に加え、ゲーム業界関係者を集めて意見交換する。24年パリ大会から公式競技化へとの声も聞こえてくる。
出遅れ目立つ日本
「eスポーツ」という言葉が生まれたのは00年。03年にはフランスで初のワールドカップも開かれた。米国や韓国などを中心に活発に活動し、いまや世界のeスポーツ人口は3億人を超え、市場は9億ドル超えると聞く。東京オリンピック・パラリンピックが開かれる20年には、人口5億人、市場は15億ドル規模まで拡大するとの見通しも出ている。
プロの大会では日本円で賞金総額100億円を超える大会も予定される。広告効果を考えたとき、めざといIOCが抜け目なく振る舞う理由がみえた。
ゲーム大国でありながら遅れが目立つ日本。オリンピックで実施となれば、突然、動きを加速するかもしれないが…。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)
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