受動喫煙防止法が成立 外食大手は“全面”へ取り組み加速

 

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法の成立に先駆け、外食産業では、大手チェーンを中心に既に全面的な禁煙への取り組みが始まっている。顧客からの禁煙の要望が強いことや、人手不足の中で従業員の受動喫煙対策をしないと人材を確保できないという背景がある。同法の成立で、今後はこれまで限定的な対策にとどまっていた大手居酒屋などの対応が注目される。

 ファストフードでは日本マクドナルド、ファミリーレストランではロイヤルホストなどが全面禁煙を実施済みだ。サイゼリヤは来年9月をめどに国内全店での禁煙方針を打ち出していたが、今月21日からショッピングセンター(SC)内の店舗は全面禁煙を先行させた。堀埜一成社長は「SCには共用の喫煙スペースがあり、それを活用できる」と説明。ファミレスでは全面禁煙の動きが加速している。

 一方、禁煙を打ち出せば客足が遠のく可能性が高いとして全面禁煙に消極的だった居酒屋業界でも、串カツ田中が6月から本格的な対策に踏み切った。国内全192店のうち、フロア分煙できる店などを除き、9割超の179店で全席禁煙とした。

 当初は客数や売上高激減の可能性も指摘されたが、6月の既存店の客数は前年同月比2.2%増と大方の予想を覆す結果だった。会社員・男性グループの来店が減少した半面、家族での利用が増えたためだ。ただ、お酒を飲まない客も増え、「お通しを出せないなどで、客単価が落ち込んだ」(広報担当者)といい、売り上げは減少する課題が出た。ある居酒屋チェーンの幹部は「串カツ田中のようにファミリー重視シフトなら可能だが、やはり居酒屋にたばこはつきもので、全面禁煙は簡単ではない」と漏らす。

 法律で定められたことで受動喫煙対策は「待ったなし」だが、居酒屋チェーンの多くは対応を決めかねているのが実情だ。(平尾孝)

 ■外食チェーンの全面禁煙の取り組み状況

 ・モスバーガー

  2020年3月までに約1300店舗で。既に750店が実施

 ・ケンタッキーフライドチキン

  19年3月末までに約1150店舗で。既に98%で実施

 ・サイゼリヤ

  19年9月までに約1100店で。ショッピングセンター内店舗は先行実施

 ・ココス

  19年9月までに約580店舗で。今年4月末時点で170店で実施

 ・ステーキのどん フォルクス

  今年7月からどん70店、フォルクス41店の全111店舗で全面禁煙

 ・串カツ田中

  今年6月から約180店で全面禁煙。大手居酒屋チェーンでは業界初