【スポーツbiz】大学スポーツのブランド力とは

 
悪質タックル問題を起こした日大アメフット部のグラウンド=東京都世田谷区

 いまだ、日本大アメリカンフットボール部が引き起こした悪質タックル問題がくすぶる。

 「チーム改善報告書」を関東学生アメリカンフットボール連盟に提出し、外部から新監督も迎えた。しかし、田中英寿理事長は依然、公の場で語ることはなく、大学当局のガバナンスの欠如が指摘されて久しい。

 日大の人気急落

 手元に、情報大手リクルートが実施した「進学ブランド力調査」の表がある。今年4月に高校3年生となった東京、大阪、名古屋の8439人に実施した「志願したい大学」のアンケートである。日大は早稲田大、明治大、青山学院大に次いで4位にランクされた。前年より、志望者を伸ばしている。

 「これはタックル事件が起きる前の調査。タックルの後に調べていたら違う数字がでてきたと思います」

 リクルート進学総研の小林浩所長はいう。事後ならば志望者数は落ちていたに違いない。

 「高校生にとって、大学のブランドというのは頭の中のイメージ。学びたい学部、学科がある、伝統がある、就職に有利というのはもちろん、学生生活が楽しめるとか、クラブ・サークル活動が盛んであるとか、そういった要素も大事なんです」

 だから、「スポーツは大学のブランド構築に重要な役割を持つ」と小林所長は指摘する。ブランド構築に10年かかるが、失うのは一瞬。日大はこれから影響に苦しむことになろう。

 対極にあるのが青学である。かねて人気の高い大学だが、文系キャンパスを青山に集約する直近の2012年には早大、明大は遠く、日大や立教大の下、5位に甘んじていた。

 志望者増加はキャンパス集中もさることながら、やはり「箱根駅伝の4連覇が大きい」と小林所長。2008年実施のアンケートでは、「クラブ・サークルが盛んである」との項目で関東地区8位だったが、今年は関東で早大に次ぐ2位に伸ばした。しかも、08年には名前がなかった東海地区で1位、関西地区4位である。ちなみに、今年全ての地区でベスト10に登場したのは早大、慶応義塾大と青学大の3校だけであった。

 「青学の場合は、ただスポーツが強いというだけではない。弱小駅伝チームに原晋監督が就任して強化、4連覇に導いたというストーリー性があることが重要です。原監督がテレビ出演などでそれを強調し、高校生や指導の先生、あるいは保護者に響いた結果でしょう」

 台風12号が接近した先週土曜日、小林所長は全国大学体育連合の大学スポーツ局長全国協議会で講演。スポーツと大学ブランド力の関係を強調した。

 全国には800校近い大学が存在、スポーツ関連の学部を持つ大学も80以上を数える。スポーツに力を入れて志願者確保をねらう地方大学も少なくない。ただ小林所長によれば、ブランド力構築には(1)スポーツの徹底的な強化(2)教育機関としての理念との関連付け(3)メッセージ・ストーリーの構築-の3つの要素が重要だという。

 ある地方私立大学のスポーツ局長は「予算や施設、人材が乏しい弱小大学にとっては至難の業だ」と肩を落とす。大学、とりわけ地方の私立大学の経営難が指摘される。スポーツを最後のとりでにしたいが、ブランド確立には長い年月が必要。さて、それまでに態勢を維持し続けることができるのか。

 米国をモデルに

 先週火曜日、スポーツ庁が大学スポーツ改革の柱と位置づける競技横断型の統括組織、「日本版NCAA(仮称)」の設立準備委員会の第1回会合が開かれた。もとより、全米体育協会(NCAA)をモデルに16年から検討を続け、来年2月末の法人設立を目指す。

 当初は8000億円規模の収入を誇るNCAAのビジネス面ばかりが強調され、大学スポーツで稼ぐことに主眼が置かれていた。今は、(1)学業充実(2)安全安心・医科学(3)事業・マーケティング-を組織の目標に掲げており、あるべき姿に落ち着いたといっていい。

 今後は3つのテーマごとに具体策を検討、大学スポーツのブランド価値向上を図り、スポンサー企業も募る。初会合に参加した大学・短大は国公私立合わせて87校。12月末まで参加を呼び掛けるが、まだまだ腰を引く大学も少なくない。地方の小さな大学もすくいあげ、ブランド力確立の支えとしたい。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)