人手や重機が足りず…西日本豪雨で離島のミカンがピンチ
松山市の離島のミカンがピンチだ。西日本豪雨で多くの畑が土砂にのまれたが、重機やボランティアが思うように集まらず、復旧が遅れている。手塩にかけた果樹が押し流された農家は「(愛媛県宇和島市など)南予の被害がひどいから、島の工事は後回しになるだろう」と焦りを募らせる。
人口約千人の興居島は、イヨカンの他、「紅まどんな」などブランド品種の産地。豪雨から1カ月近くがたっても、山のあちこちに土砂崩れの爪痕が残り、車道の泥も片付いていない。杉山守彦さん(82)の畑は、約100メートルにわたって山が崩落し、ハウス栽培の設備ごと流された。「畑に向かう農道をまず直したいが、ショベルカーが借りられない。買うにも納入が10月と言われた」とこぼす。
奥嶋千鶴さん(54)が育てていた高級品種「甘平」も土砂にのまれた。「資金と労力をつぎ込み、やっと冬に収穫だったのに。工事をしないとまた崩れそうで、このままではやり直せない」と肩を落とす。流された場所は放置する予定だ。
さらに沖合の約2500人が暮らす中島。高級品種「せとか」「カラマンダリン」などの産地だ。島へは高速船で往復3千円ほどかかり、本数も限られているためか、人手が集まらない。「JAえひめ中央」によると、島の農家の平均年齢は66歳で、担当者は「意欲を失う人が増えなければいいが」と話す。
収穫用のモノレールやスプリンクラーの配水管などとともに畑の一部が流された溝田誠一さん(46)。無事だった場所でも、果樹の根元が土砂で30センチほど埋まった。早く土砂を取り除かなければ枯れてしまうが、「手伝う人も雇う人も島にはいない」。農林水産省の災害復旧事業に申請するつもりだが「事業がいつ始まるか分からない」と困り果てている。
市農林土木課の担当者は「着工は12月ごろになるだろう」と話しており、被災農家には自助努力が求められているのが現状だ。浸水した自宅の片付けにも追われる溝田さんは「気持ちはせくが、暑くて作業が進まない」とため息をついた。
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