【世界を読む】「機内食大乱」に「喜び組」…今度はアシアナ、韓国で続く航空会社トラブル

 
アシアナ航空経営陣の退陣などを求め開かれた集会=7月6日、ソウル(共同)

 韓国で大韓航空に次ぐ第2の航空会社、アシアナ航空の国際線で機内食を出発予定時間までに積み込めず離陸が大幅に遅れたり、機内食なしで運航したりするトラブルが相次ぎ、韓国社会に波紋が広がっている。機内食を包装し、運搬する下請け業者の社長が自殺する事件が起き、内部告発ではアシアナ航空を傘下に持つ錦湖(クムホ)アシアナグループの朴三求(パク・サムグ)会長の「アシアナ喜び組」スキャンダルなども飛び出し騒動を大きくした。

 機内食の業者変更の初日に…

 「ノーミール事件」「機内食大乱」-。韓国メディアでこう呼ばれる騒動は7月1日に始まった。

 韓国紙・中央日報(日本語電子版)によると、1日は機内食の供給遅れのため航空機80便のうち51便の出発が遅延し、36便には機内食を積み込むことができないまま運航した。

 このトラブルは翌2日以降もしばらく続いた。アシアナは乗客に商品券などを配って対応したが、運航管理の非を問う批判が渦巻いた。そして、朴会長自身がトラブル初日に乗った中国行き飛行機では温かい機内食を提供していたとの証言や、機内食を包装し、運搬する下請け業者の社長が2日に自殺したとのニュースが火に油を注いだ。

 実はアシアナは7月1日から機内食の供給業者をゲートグルメコリア社に変更していた。聯合ニュース(同)によると、機内食を供給する予定だったゲートグルメ社が建設していた機内食製造工場で今年3月に火事が発生して予定通りの供給が困難になったため、アシアナは格安航空会社などに機内食を供給する別の会社と3カ月間の契約を結んでいたという。

 ただ、この会社は3千食の供給実績があったが、アシアナが必要とする2万5千~3万食の規模を賄うには無理があると業界で指摘されていたという。

 経営の失敗のツケ?

 「機内食トラブルの根本原因を調べてみると、朴会長の経営の失敗にある」

 ハンギョレ新聞(同)は社説でこう指摘する。

 「朴会長が錦湖タイヤの再買収に必要な資金確保のために機内食の業者を無理に変更したことが禍となった」

 もともとアシアナは子会社から機内食の提供を受けていたが、かつての経営悪化時に、この子会社の株式の大半を独ルフトハンザ航空傘下の機内食業者に売却。2003年から機内食はこの会社から機内食の供給を受け、5年契約で更新を繰り返してきた。それがアシアナは今回の契約更新期を控え、供給業者側に巨額の出資を要求。異例の要求だけに拒否されると契約更新を見送ったのだという。

 同紙によると、代わりにアシアナは、中国の海南航空を傘下に持つ海航集団が韓国支社として設立したゲートグルメの持ち分40%を取得して供給業者を乗り換えた。そして昨年3月、海南グループが朴会長率いる錦湖アシアナグループに出資した。この出資額は元供給業者に要求した額と同規模だったという。

 ちなみに錦湖タイヤは、グループがかつて拡大路線を走ったときに資金繰りに窮して経営権を手放した優良グループ企業だ。再び買収に動いたが、無理な資金計画がたたったのか、結局は「買い戻し」に失敗している。

 聯合ニュースによると、4日の謝罪会見で、朴会長は機内食業者を変更したのは契約満了によるものと説明。ゲートグルメコリアに変更したのは原価情報の開示などが良かったためだと述べた。ゲートグルメの親会社の海南グループから投資を受けたことは業者変更と無関係と強調した。

 運航に支障を与えかねない「喜び組」

 このトラブルを機に内部告発も相次いだ。アシアナ航空の乗務員教習生が朴会長の訪問を歓迎する行事に向けダンスと歌を練習する映像が公開されると、韓国メディアは「アシアナ喜び組」スキャンダルとして飛びついた。

 「朴会長関連行事を行うために飛行前のブリーフィングが省略されたり、運航に支障を与えたことがあるという暴露も出てきた」(中央日報)という。大韓航空のオーナー会長の長女で、いわゆる「ナッツリターン」を起こした「ナッツ姫」に続いて、次女の「水かけ姫」など一族による横暴で炎上したライバルさながらのバッシングを受けている。

 さらに中央日報(同)によると、朴会長の娘が関連事業の経験が皆無であるにもかかわらず、グループ企業の錦湖リゾートの常務に就かせていたことが発覚。謝罪会見で質問されると、朴会長は「女性も社会生活をしなければならない。あたたかく見てほしい」と述べ、報道関係者らを閉口させている。

 アシアナ労組は7月5日に声明を出し、「機内食トラブルは朴会長の経営失敗を原因と考えざるを得ない」として「朴会長は経営の一線から退き、専門の経営者と交代せよ」と要求した。職員の集会でも会長の退任を求めている。

 トラブルの根本原因が投資を誘致するため機内食業者を変更した経緯にあるとした疑惑について、朴会長は「誤解だ」と強弁しているが、誤解であっても今年3月の業者の工場火災があった時点で顧客サービス最優先の姿勢で対応しておけば、機内食がないという事態は避けられた可能性がある。顧客目線が欠如した結果が招いた騒動なのかもしれない。