【講師のホンネ】ビジネスに使える異文化理解術 鈴木マグラクレン美保
相手のために良かれと思ってしたことなのに、かえって不快感を与えてしまった経験はないだろうか? 国際結婚をし、日本文化とカナダ文化の間に立って周りを見回してみると「全く悪気のない言動なのに裏目に出てしまって残念だなあ」という場面に出くわす。その中から、ビジネスの現場における例とその対処法を挙げてみる。
(1)「日本語がお上手ですね!」。会議などで日本語を流暢(りゅうちょう)に話す外国人に対する称賛の一言が、相手の表情を曇らせることもある。「ありがとうございます」とお礼は言うものの、日本語が流暢なその人には自分の日本語を言及されるより、日本語で対等に議論を深めたいというのが本音であることが多い。ただし日本語を学習中の人に、その日本語を褒めることは効果的な場合もあり、一概に褒めてはいけないのではなく、相手の状況を考慮して対応することが大切なポイントとなる。
(2)「外国ではどうですか?」。相手への質問は、相手に興味関心を持っていることのメッセージになる。しかし「外国では」という聞き方をすると、自分の国が他の国と一緒くたにされた印象を与えたり、日本対外国という区別をされて不快だと感じさせてしまったりすることがある。逆の立場で自分が海外に行き、日本について聞かれるときに「外国ではどうですか?」と言われるとその違和感に気付くと思う。具体的に相手の国名を挙げて聞いてみると、相手は喜んで話してくれるだろう。
(3)「We Japanese are…(われわれ日本人は)」。英語で日本のことを相手に伝えようとする場面で、この表現を使う人も少なくない。自国について発信することは、相互理解にとても大切なことだが、「We Japanese」という表現は、日本人対外国人という対立した印象を与えかねない。相互に理解しようと努めている場面で、そのつもりはなくとも違いを必要以上に強調してしまう。「日本人は」と説明する際には、「A lot of Japanese(多くの日本人)」を主語にしたり、「Japanese tend to(日本人の傾向として)」といった形で説明すると相手は受け取りやすい。
日頃の何気ない言動が相手にはどう伝わるかを、意識化してみることが、異文化理解を深めるコツの一つである。
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【プロフィル】鈴木マグラクレン美保
すずき・まぐらくれん・みほ 静岡県出身。企業・大学・自治体などで、異文化間コミュニケーション、ダイバーシティ、英語に関する研修の講師を務める。TOEIC960点、全国講師オーディション奨励賞受賞(2014年)、米Gallupストレングスコーチングコース通訳(14、15年)など。
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