製造業、新在留資格の適用切望 人手不足深刻、働き掛け強める
政府が新たな在留資格による外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、ものづくりの盛んな愛知県が対象業種に「製造業」を含めるよう働き掛けを強めている。特に中小企業の人手不足は深刻で、産業界や経営者は切望。全国の自治体の関心も高く、経済産業省が開いた説明会には37都府県が参加した。
「製造業を新たな外国人材の受け入れ業種として認めていただく必要がある」。7月下旬に開かれた全国知事会議で愛知県の大村秀章知事はこう力説した。会合では外国人材のプロジェクトチーム設置を主導し、新設が決まった。
愛知県は自動車、工作機械を中心に製造業は好調を続ける。その影で産業を支える中小企業の雇用は、人手の過不足を示す「雇用人員判断指数」が今年4~6月期にマイナス31.5となり、昨年同期のマイナス22.3から不足幅が広がった。
新卒は大企業に流れるため、期限付きの外国人技能実習生で埋め合わせる中小企業も多い。約20人の実習生を雇う、名古屋市の金属加工メーカー「ナガサキ工業」の長崎洋二社長は「長く働いてくれるならありがたい」と外国人材の受け入れ拡大に期待する。
政府が6月、骨太方針に新たな在留資格の創設を打ち出したのを受け、県は一部の製造業を対象業種に含めるよう求める要請文を提出。政府は「農業」「建設」など5業種を念頭に置いてきたが、「製造業」や「水産業」も検討を始めた。
県が提案する「外国人雇用特区」では、有効求人倍率が高止まりしている輸送用機械器具や金属製品など4つの製造業を想定。高い技術力や日本語能力、家族の帯同などが受け入れ要件で、単純労働分野での就労を事実上認める政府の計画より労働力の定着を重視した内容となっている。
経産省が7月中旬に開いた説明会には、自治体や企業の関係者が出席し「製造業は5業種に加わるのか」「技能実習制度と併存するのか」などの問い合わせが相次いだ。経産省は同下旬、自治体対象の説明会を再度開き、37都府県が集まった。
石川県は技能実習の手続きが煩雑だとの企業の声を受け「新制度は使い勝手を良くしてほしい」と要望する。
秋の臨時国会で法改正されれば、来春にも受け入れ拡大が始まる。経産省は対象業種の選定に関し「各産業の外国人材への需要が高い。各方面の意見を聞きながら検討を進める」としている。
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