AI投資判断、個人に広がる 金融関係各社が新規客囲い込み
投資判断を人工知能(AI)に任せます-。そんな金融関係各社による個人向けサービスが増えている。AIが銘柄を選んだり運用内容を決めたりする。少額投資の普及などを背景に投資家の裾野が広がる中で差別化が図れるほか、AI活用による運用効率化で手数料を抑えやすいなどのメリットもあり、新規顧客を囲い込もうとの狙いだ。
「少額投資の環境整備や金融のネット商品強化で市場が伸びている」。今月上旬からAIが運用銘柄を決める投資信託商品の運用を始めた三菱UFJ国際投信の稲垣慶太マネジャーは、開発の背景を語る。
開発した「eMAXIS Neo(イーマクシス・ネオ)」は宇宙開発、遺伝子工学、ロボットの3テーマに関連した各30銘柄程度を抽出して構成する。米格付け機関S&Pの子会社の分析システムを採用し、銘柄抽出などをAIに委ねる。稲垣氏は「AI活用で客観的に妥当性のある銘柄を抽出できる」と話す。
お金のデザイン(東京都港区)はAIを使ったロボットアドバイザーサービス「THEO(テオ)」を展開。年齢や資産額などを入力すると、約6000種類ある上場投資信託(ETF)の中から、顧客ごとに最適な配分比率などを提案し運用してもらえる。1万円から始められ、年間手数料は資産残高の1%。13地銀との連携もあり、利用者は約5万人に達した。
岡三オンライン証券はベンチャー企業と連携し、同社の保有する日本株取引や株価、企業データなどのAI解析を始めた。11月からスマートフォンアプリなどの開発を進め、年内にも顧客別に最適化した投資アドバイスを通知できるなどのサービスを目指す。
東京証券取引所などによると、2017年度の個人株主数は延べ5129万人で初めて5000万人の大台に乗った。今年からは少額投資非課税制度(NISA)の長期積立枠「つみたてNISA」が始まったことで、さらなる上積みも期待されており、各社は個人株主が投資を始めやすくなるようなサービスで需要取り込みを図っている。(佐久間修志)
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