ネット配信、LINE、VR…自動車各社があの手この手で顧客接点に知恵

 
「ボルボスタジオ青山」のVRコーナーでは、目の前に広がる大画面で運転支援機能などを疑似体験できる=東京都港区(ボルボ・カー・ジャパン提供)

 大手自動車メーカー各社が顧客との接点づくりで知恵を絞っている。三菱自動車がインターネットによるライブ配信で新型車の魅力を伝える企画に力を入れ始めたほか、スマートフォンやSNS(会員制交流サイト)を試乗予約に生かす動きも広がってきた。少子化や若者の車離れで国内新車市場が伸び悩む中、多様な切り口で消費者の関心を引き寄せたい考えだ。(臼井慎太郎)

 三菱自が販売のテコ入れに向けて3月に投入したスポーツ用多目的車(SUV)「エクリプスクロス」が好調だ。発売前には受注台数が約5千台と月間販売目標の5倍に達した。原動力となったのが、1月9日から約1カ月にわたりネット上に開設した「ナイトショールーム」。東京都港区の本社ショールームから夜間に動画をライブ配信し、車の魅力を伝えたり質問に応じたりする試みで、述べ約7万7千人が視聴した。

 エクリプスクロスを購入した顧客の半数近くが20~30代。動画のライブ配信が若者の獲得で効果を発揮した。これを受けて三菱自は、一部改良して23日に発売したSUV「アウトランダーPHEV」にも同様の手法を取り入れ、ネットと実店舗を両輪に拡販に弾みをつける構えだ。

 日産自動車は通信アプリ大手LINE(ライン)の無料通話アプリで試乗予約できるサービスを今夏に始動。仮想スタッフと対話しながら試乗日時や場所を手軽に決められる。平成34年度までに販売台数の4割を電動車とする計画の日産は、試乗への入り口を増やすことを重視する。日産の星野朝子専務執行役員は「EV(電気自動車)などは実際に乗って先進性能や乗り味を体感してもらうと購買意欲が高まりやすい」と話す。

 欧州高級車メーカーの日本法人もスマホ世代の獲得に注力。メルセデス・ベンツ日本はNTTドコモと連携し、スマホのアプリから最新モデルの試乗を予約できるサービスを10日に始めた。提供場所は同港区と大阪市のブランド発信拠点で、最大2時間までスタッフの同乗なしに無料試乗できる。同社の上野金太郎社長は「(ベンツ車に)縁がなかった消費者との接点を広げたい」と述べた。

 ボルボ・カー・ジャパンは、試乗だけでは訴求に限界がある運転支援機能などの優位性を伝えようと、ブランド発信を担う「ボルボスタジオ青山」(東京都港区)に、コンピューターで生み出した映像や音楽で現実を疑似体験できるバーチャルリアリティー(VR)技術を導入。ゴーグル型の専用端末を装着すると、シカなどの大型動物を車が検知し自動ブレーキを作動させる安全技術の体験が可能という。

 トヨタ自動車も3月に開設した高級車ブランド「レクサス」の発信拠点(同千代田区)を通じ、VRでドライブを体験する機会を提供。ボルボ、トヨタの両施設ともカフェを併設するなど、居心地のいい空間にもこだわった。

 日産によると、来店客の7割以上がネットサーフィンで事前に買う車を絞るという。各社は、消費者の購買行動の変化を踏まえ、顧客との接点を増やす取り組みが必要になっている。