社員にも「やり切らせます」 飛ぶ鳥落とす勢いのRIZAP 瀬戸社長大いに語る

 
インタビューに応じるRIZAPグループの瀬戸健社長

 話題のタレントが劇的に痩せるビフォーアフターのテレビコマーシャルで有名になったRIZAPは、実はコングロマリット(複合)企業でもある。グループを束ねるRIZAPグループの瀬戸健社長に、事業多角化や今後のグループ展開について話を聞いた。(東京商工リサーチ特別レポート)

 タレントの佐藤仁美さん、梅沢富美男さんなど、話題のタレントが劇的に痩せるビフォーアフターのテレビコマーシャルで有名になったRIZAP。美容関連の企業にみえるが、実はコングロマリット(複合)企業でもある。

 グループを束ねるRIZAPグループ(東京都新宿区)は約80社を傘下に置いている。最近もアパレル販売のジーンズメイト(東京都渋谷区)や、フリーペーパー発行のサンケイリビング新聞社(東京都千代田区)、サッカーチームを運営する湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)など、次々とM&Aでグループ化してきた。

 買収した企業の大半は業績不振。だが、1年あまりで赤字削減や黒字化を実現している。

◇ ◇

◆当初は豆乳クッキーが主力、上場で売上高が10分の1に

 瀬戸社長の単独インタビューの一問一答は次の通り。

-早いペースでの買収が注目されています

 「(2006年5月の)上場当時の売上高は24億円、主力は『豆乳クッキーダイエット』で、売上高の98%を占めていました。主力商品1本の場合は選択と集中をすれば成長性はありますが、何かあったときは危ない。この時からM&Aを始めました」

 「翌年はクッキーだけで売上高100億円を達成し、次は300億円を目指そうとしました。ところが、『ビリーズブートキャンプ』や『おからクッキー』が流行り、売上高が一気に10億円、10分の1に。しかし、すでに3~4社をM&Aしており、それらの会社が助けてくれた。これまで赤字決算はその年の1回だけです」

 「攻めているように見えますが、“一本足打法”を守ってくれたのがM&Aをした企業でした。メイン事業にしがみつく“一本足打法”は、それなりのリスクも伴う。レピュテーション(評判、風評)リスクを回避できず、会社自体が消滅する可能性もあります。RIZAPグループは、ひたすら攻めているように思われがちですが、実際はM&Aで企業、雇用を守るという意味もあります」

◆「新陳代謝できていない会社が多い」

-買収会社のブランドイメージ維持は

 「ケースバイケースですね。各社のトップに任せています。 M&Aをすると新陳代謝のできていない会社が非常に多くみられます。そういった意味で、今、お客様に求められている事業モデルに変えていく。再生中の会社は中身を入れ替える。例えば、ジーンズメイト。ロゴや内装を変え、女性向け商品の扱いを増やし、だいぶ変わりました。女性の来客率40パーセントを超える店舗も出ており、足元は絶好調」

-改善する要因で重要視することは

 「社内に答えがあります。やれば良いのにやっていなかった事をまずやる。やめなくちゃいけない事をやめる。単純にそういう事。答えは目の前にけっこうあるんですよ」

-具体的にはどんなことがあげられますか

 「店頭で5年間、1個も売れない時計が置いてある。なぜ置いているのか尋ねると『前から置いていたから』。こんな答えしか出てこない。現場に答えがあるんです」

 「よくコンサルタントの話を聞くと社員は『そんなの前から知っている』と。RIZAPの低糖質、食事といったら、みんなだいたい知っている。ですが実践することが大事で、やり切らせるのがRIZAP。世間話的に『こうしなくちゃいけないんだよね』と話すような事を5年も10年もやっている会社がある。それを改善し、やり切れるか。そこが重要です」

◆「事業ドメイン」と「バリューチェーン」

-買収会社を選ぶ基準はありますか

 「自己投資のビジョンに合うか。世界トップの会社になるために、それをかなえるための事業ドメイン(領域)とバリューチェーン(価値の連鎖、『-分析』はどこで価値が創出されているのかに着目する)が必要。事業面と機能面、この2つの切り口が重要です」

-民事再生企業のスポンサーへの考えはありますか

 「もちろん可能性はあります。これまでのしがらみとか、良くない習慣を断ち切れないとか、外の人を守って中の人を守れない事がある。自分で決断できない時もあり、その背中を押せることは我々の強みです。我々がある程度、悪者になって新陳代謝してもらう。その後、新しい価値を創造していかなくてはならない。価値創造は我々の強みでもあるので、連携していくことは可能です」

◆元カルビー会長の松本氏は欠かせない存在に

-買収した会社を売却する考えはありますか

 「今までの実績を見てもらえれば、売った実績はほとんどありません。事業面でのシナジーがないと見えるかも知れませんが、買収段階でしっかり検討を重ねており、よほどな事がない限り売却はありません」

 「選択と集中は考える。膨張だけというわけにはいかず、しっかり見直さなければなりません。シナジー効果が出なかったら、他の会社にサポートしてもらった方が幸せという可能性もある。そこはいつも頭に入れています。より伸ばしてくれる会社があれば検討するという考えはありますが、それは目的化していないんです」

 「常に選択と集中は考え、設立15年で約80社のグループ会社がありますが、結果的に今は売却することはほぼありません。ただ、松本COOが就任したことだし、今後状況に応じ変化はあるかもしれません」

-6月に就任した元カルビー会長兼CEOの松本晃氏ですね

 「企業経営に肝心なのは守りと攻めのバランス。M&Aも自社をしっかりまとめ、業績をあげた上でようやくできることです。足元がグラついていたら次のステップに進めません。松本さんには 足場固めという意味で、グループ内でぶつかり合う個性をしっかりまとめてもらおうと思い、お声掛けしました」

 「個性豊かな社長ばかりなので、方針や意見をまとめるのは一苦労です。松本さんのような企業運営のエキスパートを迎えることで、新しい声をさらに吸収しやすい環境になれば、と。グループ内で新たな事業、シナジーをどれだけ生み出せるか、松本さんはRIZAPにとって、すでに意思決定に欠かせない存在となっています」

◆2年以内に米国進出を予定

-海外展開については

 「すでに上海、香港、シンガポールにRIZAPを出店しています。『RIZAP GOLF』も近々台湾に出店予定です。海外事業は2018年3月期決算で初めて黒字に乗りました。今、アジア地域での手ごたえを強く感じているところです。また、欧米への進出準備も着々と進んでいます。手始めとして今後2年以内の米国進出を予定しています」

-米国でも日本式のRIZAPジムを展開するのでしょうか

 「まずは市場調査の意味でRIZAPを出店します。日本で展開しているRIZAPジムには一切こだわっていません。海外店舗はあくまで顧客ニーズに合わせて柔軟にアップデートしていきます。これまで、日本のサービス系企業で日本式をそのまま欧米に持って行き成功した例も聞かないですしね。従来式にこだわると、現地で浸透するものも浸透しません」

 「今、アジアで展開しているジムもトップ人事からすべてローカルで賄ない、迅速にニーズを汲んで運営しています。サービス業は第一に人。その土地の風土や生活様式を知っている人でないと経営するのは困難です。今後もその方針は変わりません」

-健康、美容、アパレル、出版、小売とあらゆる業種を傘下に収めています

 「単純に企業を買収しグループを拡大していると思われている向きもありますけど、(きちんと)業容を精査し、グループ間のシナジーを考慮してやっているんですよ。現在、グループ店舗数は1000店ほど。商品の共同購買や店舗統合などでコストを削減できています」

 「念頭に置いているのは雇用を守り抜く、ということ。これだけたくさんグループ会社があると、人が足りない店舗がある一方で、余剰気味の店舗もしばしばみられます。そういう時は(人の足りない店舗、会社に)出向してもらっています。人手不足の解消と人的資源の交流双方を図った取り組みになります」

◆今後は「医療」に注目

-今後グループでどんな企業を必要としますか

 「病院等の医療分野を注目、検討しています。医療、ヘルスケアは直近、グループで最も力を入れているテーマです。単に生きる、死ぬ、治療するではなく、予防を含めて健康寿命を延ばす取り組みを進めます」

 「実際に、今年から長野県伊那市で成果報酬型のシニア健康増進プログラムを始めました。健康体操を定期的に取り入れ、体力年齢が10歳以上若返った参加者も相当数おり、効果は確実に出ています。高齢者の医療費を削減できれば、その分、各自治体で健康増進に充てられる予算も増えるはずです」

-松本氏のCOOへの就任も医療進出を見据えてのことでしょうか

 「ヘルスケアはずっとやりたかったんですが、専門性が必要でこれまで手を出せない領域でした。この時期にジョンソン・エンド・ジョンソンの社長だった松本さんの見識が必要でした」

-医療機関のM&Aの時期は

 「まだ決まっていません。M&Aも相手あってのことですし。湘南ベルマーレも1年ぐらい進展がなかったんです。うちは、皆さんが思っているほどがっついていないですよ(笑)」

◆気になる東証1部への上場は?

-株主総会で東証1部への早期上場を望む声がとても多かったのが印象的でした

 「本来なら昨年ぐらいに上場したかったんですけど、会社は成長しており、M&Aでどんどん広がっています。そうなると審査にも時間を要し、確認事項が増える。こればっかりは。株主の皆様にはもう少しお待ちいただければと思います」

◇ ◇

 設立から15年の短期間で約80社を傘下に収めたRIZAPグループ。

 6月にはカルビー元会長兼CEOを勇退した松本氏を代表取締役COOで招聘した。足場固めも進めている一方で、インタビュー中、「ライバルと考える企業はとくにない」と断言した瀬戸社長。現状に満足せず海外や医療分野への進出にも夢を描く。

 しかし、2018年3月期で78億2000万円に達する「のれん」、変動が大きいキャッシュフローなど、克服すべき課題も抱えている。

 今後、RIZAPグループがどうシナジー効果を生み出し、成長をたどるのか。勢いから脱皮する次の一手が注目される。

 《東京商工リサーチ特別レポート》大手信用調査会社の東京商工リサーチが、「いますぐ役立つ最新ビジネス情報」として、注目の業界や企業をテーマに取材し独自の視点に立った分析をまとめた特別レポート。随時掲載します。

▼東京商工リサーチ特別レポートのアーカイブはこちら