「へらしぼり」で二重構造の酒器 金属加工の高桑製作所が特許生かし開発

 
熟練の技で、へらしぼり加工を行う高桑製作所の従業員=東京都大田区(同社提供)

 金属加工を手掛ける高桑製作所(東京都大田区)は、金属加工技術の「へらしぼり」で製作した日本酒用の酒器を開発した。1枚のチタン板から、従来のへらしぼりでは不可能とされていた二重構造の器を作る技術を独自に開発。高桑英治社長は「2020年の東京五輪に向けた訪日外国人向けの新しい土産品として国内外にアピールしたい」と話す。

 「一枚●(ひとひらしぼり)」と名付けられたこの酒器は、いわゆる口につけて飲むための「ぐいのみ」と、ぐいのみに日本酒を注ぐためのポットの役目を持つ「かたくち」のセットになっている。下にぐいのみ、上にかたくちを重ねて、食器棚に収納できる。

 ぐいのみは直径7センチ、高さ5センチ。重さは約65グラム、容量は37ミリリットル。かたくちは最大直径10センチ、高さ8.5センチ。重さ90グラム、容量は約300ミリリットル。

 「日本酒の味が変わらないように」(高桑社長)との考えから、酒器の素材にはチタンを採用した。チタンは、さびにくく密度が鉄の半分強と小さい割に強度は高いなど、優れた特徴がある一方で、切削加工がしにくい難削材としても知られる。

 そこで異なる大きさの金型を取り替えながら、容器の内側と外側とを少しずつへらを使ってしぼりを重ねて形を整えていくことで、しぼり加工では不可能とされた酒器を実現させた。

 この技術は昨年1月に特許を取得。さらにチタンでのへらしぼり技術を確立したことが評価され、17年に大田区産業振興協会による「第29回大田区中小企業新製品・新技術コンクール」で「おおた秀逸技能賞」を獲得した。

 7月に都内で開かれた食器の総合展示会において、ぐいのみとかたくちのセット品10組を販売したところ、すぐに完売。大手百貨店などからの引き合いも入っているという。

 10人の従業員のうち、この日本酒器を作れるのは3人しかいないため、大量生産はできないが、高桑社長は「少しでも多くの人に日本の匠の技、ものづくりの世界に関心を持ってもらえたら」と話している。

●=金へんに交の旧字体