重工大手が宇宙事業を強化 海外勢やベンチャーに対抗

 
三菱重工業が開発に関わる新型ロケット「H3」の完成予想図(JAXA提供)

 大手重工メーカーが宇宙ビジネスを強化している。三菱重工業とIHIは新型ロケット、川崎重工業は宇宙ごみ(デブリ)を除去する人工衛星をそれぞれ開発し、新たな事業の可能性を探っている。宇宙分野では民間参入が進み、ビジネスの可能性が広がっている。各社とも長年の事業で培った技術や経験を生かし、海外勢やベンチャーに対抗する構えだ。

 「(現行の)H2Aに比べて約半分のコストを目指している」

 三菱重工の宇宙事業を率いる二村幸基執行役員フェローは、2020年度の試験1号機打ち上げを予定する大型ロケット「H3」についてこう話す。

 H3は全長63メートルで、静止軌道への人工衛星の打ち上げ能力は6.5トン以上と「H2A」の4.6トンを上回る。ロケットの競争力を左右する年間打ち上げ可能回数も増える見通しだ。三菱重工は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の要求に沿って技術仕様をまとめる開発主担当として汎用(はんよう)部品の採用などを進め、コストを50億円程度に半減させる考えだ。

 H2Aを製造してきた同社は、13年にJAXAから打ち上げ輸送サービスの事業移管を受けて自ら顧客開拓を開始。海外からも受注を積み重ねつつある。日本が打ち上げ回数で欧州アリアンスペースや米スペースXに後れを取る中、追い上げの原動力になる。

 IHIは、小型衛星の需要増で普及が進む小型ロケット分野を強化している。キヤノン電子などと共同出資会社を設立し、JAXAから製造を請け負っている「イプシロン」よりさらに小さいロケットの開発に着手。21年度の打ち上げサービス開始を目指している。IHIの並木文春宇宙開発事業推進部長は「(ラインアップ拡大で)顧客対応の幅を広げ、拡大する需要を取り込む」と意気込む。

 一方、川崎重工が開発中の衛星は、画像センサーで捕捉した大型デブリを「把持装置」でつかんだまま大気圏に突入し、燃やし尽くす仕組み。20年度にも試験機を打ち上げる計画で、実用化されれば世界初となる。衛星へのデブリ衝突が問題視される中、政府機関などから受注したい考え。

 宇宙分野をめぐっては、政府から民間に事業主体が移る一方、小型ロケットやデブリ除去、衛星データの活用など裾野が広がりつつある。一方、スペースXに代表されるベンチャーや新興勢力の台頭で競争は激化し、価格破壊も進む。「開発を続けないと技術が途絶えてしまう」(IHIの並木部長)との事情もあり、重工メーカーにとっては正念場ともなっている。(井田通人)

 ■宇宙分野をめぐる重工メーカーの取り組み

 ・三菱重工業

  新型ロケット「H3」を開発、衛星打ち上げサービスの受注拡大狙う

 ・IHI

  キヤノン電子などと小型ロケットを開発、小型衛星の打ち上げ需要を取り込む

 ・川崎重工業

  デブリ除去衛星を開発し、2020年度中にも試験機を打ち上げる計画