ただ売るだけじゃない! 不動産売却には様々なオプションがあるんです

 
古い家を蘇らせて高く売れるようにする「りのばす」の対象となる物件は概ね築15年以上の物件だという(※写真はイメージです)

 家を売ることは頻繁にあることではないかもしれない。しかし「離れて住む親が亡くなり、子は独立して自分の家を持っているので今住んでいる家を売る」「離婚をしたので今の家を売って別々の場所に住む」「余生を静かに過ごすため自然の多い地域に住み替える」等々、家を売るタイミングは不意にやってくることが多い。

 家の個人売買は簡単にできるものではないため、不動産屋にお願いする人がほとんどだろう。

 その不動産屋さんの物件売却のサービスには、最近様々なオプションがあるという。

▽売主の最大のリスクを解消

 今回注目したいのは東京財形(東京都杉並区)が提供する不動産売却サービス「りのばす」だ。

 このサービスの特徴は、次のようなものだ(1)審査、査定後、同社がまず物件を買い取ってしまう(2)同社の経費でリノベーションをして物件に付加価値をつける(3)買い取り時より高い価格で売却する(4)利益分から経費を差し引いた残りの半分を売主に還元。

 先に買い取ってしまうことで、売主の最大のリスクである「売れない」を解消する。そして、同社の経費でリノベーションをして「売れる状態」にした上で、買い取り時の査定額より高く売却し、利益分から経費を差し引いたうちの半分を売主に還元するというのだ。一戸建て、マンションどちらでも対応できる。

 同社が先に買い取るため、住み替えなどでお金がすぐに必要な人、リノベーションをするので古い物件を売りたい人にはメリットがありそうだ。

 しかし、一度不動産業者が買い取ってしまったら別にリノベーションしようとそのまま売ろうと、売主にとってはもはやどちらでもよいのではないか?

 しかも、わざわざ自社の経費でリノベーションをして、売れた分から経費を差し引いた利益の半額を売主に支払うというのは、あまりにもお人よしなサービスではないか?

 どうやら、このサービスが始まったきっかけに秘密があるようだ。同社代表取締役の川村昭蔵さん(55)に訊いてみた。

▽元々は友人向けにやったことがきっかけだった

 「実は友人が『家を売りたい。住み替え先が決まっているのでなるべく早く売って住み替え費用にあてたい』というのが始まりだったんです。しかし、その売りたい物件は古くてなかなか売れそうもない物件でした」(川村さん)

 そこで川村さんは、友人がスムーズに住み替えをできるように最初5800万円で家を買い取った。そして少しでも古い物件が高く売れるように、何度も工務店や友人と話し合い520万円の費用でリノベーションをした。

 蘇った物件は7500万円で売れた。そして買い取った金額5800万円、リノベーション費用520万円と業務費用190万円を差し引いた金額990万円の利益分の半額である495万円を還元したのだ。

 「元々友人のためにやってみたことなのですが、一通りやってみて『これは友人に限らず多くの人にニーズがあるのではないか?』と思ったんです。リノベーションをすることで高く物件が売れたら、売主様に利益の半額を還元してもこちらにも利益が出るのでWin-Win(ウィンウィン)の関係なんです」(川村さん)

 川村さんはサービス内容を事業として整え、2018年3月、新サービス「りのばす」を立ち上げた。

 「りのばす」という名前には、「リノベーション」と「自身とお客さん両方の利益を伸ばす」という意味が込められているという。

▽街の相場に合わせたリノベーションが重要

 リノベーションで家を蘇らせて高く売れるようにする「りのばす」。それではどんどん費用をかけてボロボロの物件でも新築のようにするとより効果的なのだろうか?

 川村さんが答えてくれた。

 「ただリノベーションすればいいってものでもないんです。その街の適正価格というものが存在するんです。例えば、庶民的で物価の安い街で高級住宅街並みの高い物件を売ったとしても、今度は買主の方が現れてくれません」

 リノベーションの範囲や中身を決めることには最も気を使うという川村さん。先の友人の家を売却する時も何度も打ち合わせをした。どこまでリノベーションするべきかをお互い納得したカタチで決めるためだ。例えば、付帯設備を全て交換するのではなく、面材の張り替えや補修程度にしておいたほうがよい例もたくさんあるという。

 ただ不動産業者に丸投げするのではなく、売主側も不動産業者とともに歩こうという気持ちがこのサービスには重要なのかもしれない。(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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